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2010年2月12日 (金)

ギリシアの財政危機とユーロのポートフォリオ

キリスト教美術に関する12週連続の講演会を聞きに行っている。もちろん講師陣は全員錚々たる美術の専門家ばかりだが、この種の講演会で楽しいのは、美術とそれを育んだ時代の経済・社会構造との関わりについて新しい発見が出来る事だ。唯物史観を持ち出すほどの事ではないが、今週の講演会でロマネスクとゴシックが建築様式として峻別認識されたのはルネッサンス期であり、ゴシックは粗野なものを表す形容詞で、その語源はゴート族である、と知って目から鱗がまた一枚落ちた。ルネッサンスは単純な古代への回帰ではなく、ラテン族の末裔としてのイタリア人が、ゴート(=ゲルマン)族の価値体系や文化を拒否したという事だったのである。

民族や国民国家が自らのアイデンティティを必要とする時、「古き良き時代」の価値体系へ回帰が生じる。ルネッサンス以外にもこうした事例は多い。例えば宗教改革の本質は、ドイツ(=神聖ローマ帝国、ゲルマン族)の、カトリック教会と表裏一体であったフランスに対する反攻であった。さらに、プロテスタントが実はアリウス派の復権だったのではないか、という事が多くの研究者によって示唆されている。(この点について筆者は、文化人類学からの論考が必須だと考えている。)わが国でも、徳川幕藩体制を転覆した明治政府は新たな自前のアイデンティティ(=旗印)を必要としたため、廃仏毀釈を行なって神道を国家統合のイデオロギーとした。やはり「古き良き時代」の価値体系へ回帰したのである。

さて、ギリシアの財政危機がユーロロングの取り崩しを招き、世界同時株安の一因にもなっている。この事が一時的な欧州経済の停滞を招く可能性はあり、ユーロ自体も、多くの主権国家をカバーし続ける統一通貨としては限界が見えて来た。現実的なユーロの姿は、最終的にはユーロ・ファウンダー6ヶ国+英国をコアとして、外縁諸国がそれぞれの幅でユーロペグを運用する形になるのだろう。だがこの事が長期的なEU統合・拡大を阻害するとは思えない。なぜならEUの統合・拡大の本質は、世界最大の正教国であるロシアをも包含する大キリスト教世界への回帰であり、長期的には揺るぎのない歴史的潮流であるからだ。

翻ってわが国の民主党政権では、攘夷論(=米軍基地排斥)と開国論(=外国人参政権付与推進)が整合性のないままに同居し、経済政策では新古典派とケインジアンが与党内ポリティックスによって使い分けられている。首尾一貫した価値体系を持たない政権が国際資本市場で信認を得る事は難しい為、長期ポートフォリオは円投・ユーロロングが正解であろうと考えている。

参考:過去ログ「欧州とユーロ」

http://professor-snape.txt-nifty.com/investors_eye/cat4427643/index.html

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