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2010年1月 4日 (月)

2010年は「意図せざる国際化」元年

昨年8月のブログ「総選挙後のポートフォリオ」で予想した「意図せざる小さな政府」が、不幸にも2010年度当初予算案で早くも実現してしまった。

http://professor-snape.txt-nifty.com/investors_eye/2009/08/post-66b3.html

2010年は日本が財政のプライマリーバランス均衡へのロードマップを半永久に放棄し、その帰結として「意図せざる国際化」が始まった年として記憶される事になるだろう。以下その理由を概説する。

昨年12月25日に発表された2010年度一般会計歳入歳出概算によると、予算規模は92兆円。民主党政権発足後100日で早くも揮発油税暫定税率撤廃のマニフェストを放棄し、公債金(国債発行額)を44兆円に抑えこんでなお、プライマリーバランスはマイナス24兆円だ。だが問題はその先にある。歳入・歳出どちらの面でもプライマリーバランス均衡化の目処が全く立たないのだ。

まず歳出面では、流行語にまでなった事業仕分でさえ、多目に見積もっても歳出予算の2%程度しか削減できず、来年度以降は公共事業を含めてもう削れる項目がないどころか、歳出項目は増加要因ばかりなのだ。最大の歳出項目である社会保障費については説明を要しない。人口構成の老齢化は経済政策ではどうにもならないのだ。さらに「対等な日米関係」を標榜して在日米軍基地縮小を進める以上は自前の安全保障体制にシフトする必要があるから、防衛費の膨張が避けられない。ただこうした財政の硬直化は目新しいものではなく、一般会計の歳出規模は2001年以降大きくは変わっていない。2001年以降大きく変動して来たのは歳入サイド(税収)であり。これがプライマリーバランス悪化の主因なのだ。歳入サイドに改善の目処はあるのだろうか。

税収のうち法人税は、景気循環による一時的なアップダウンは別として、次のような構造的要因から長期的に増加が見込めなくなった。即ち、近い将来CO2排出枠のキャップ・アンド・トレードと環境税の導入が避けられず、また登録型派遣が禁止される見通しとなった事で、製造業の生産拠点の海外移転が加速する。そうなると経済合理性で動く企業部門が今後中国バブルの恩恵を享受する可能性は大きいが、それは国内の雇用にも税収にもつながらない。さらに大手企業の間でも、国内税制の行方次第では、EU企業のように本社機能も含めた思い切った多国籍化に踏み切る流れが止まらなくなる。いずれにしても、30兆円を超えているGDPの海外流出が名目GDPの10%を越えるのは時間の問題となろう。企業部門の「意図せざる国際化」(国外逃避)が起こるのだ。

家計部門はどうか。国内雇用が頭打ちとなる以上、所得税の増収は期待できない。さらに、相続税・固定資産税の増税が避けられないばかりでなく、仙谷行政刷新相が迂闊にも年末の読売テレビ番組で、高齢者を対象とする資産課税の導入に言及したのだ。そうなれば、今後日本でも個人資産の途上国型キャピタル・フライト(国外逃避)が止められない流れとなり、家計資産も「意図せざる国際化」に向かう。さらに、政治家にとってのトラウマである消費税引上げは依然としてタブー視されているが、仮に5%引き上げて10%にしたところで増収効果はせいぜい10兆程度にすぎず、プライマリーバランスの回復さえままならない。あとは税外収入であるが、有事におけるバッファーである埋蔵金は、一度手をつければなくなってしまうのが道理であり、2010年度は言わば生命保険を解約してキャッシュを何とか確保したわけであるが、もはや有事の備えはない。そうなると、財政の公債金(国債発行)依存度がますます高くならざるを得ないのは明らかだ。

それでも、これまでは家計部門の高貯蓄のおかげで何とか国債が消化出来た。だがそれにも限界が見えて来たのである。昨年9月末現在、政府負債残高の家計資産に対する比率が史上最高の66%まで上昇した。日経のコメントによると、このまま政府負債の膨張が止まらず、少子高齢化を背景に家計の貯蓄が減少に向かえば、2020年までに政府負債残高が家計資産を逆転する可能性がある、という。(2009年12月30日、Nikkei Net)これに個人資産のキャピタル・フライトが加わるとなれば、日本は数年のうちに外貨建国債の発行とその本格的な海外消化に追い込まれることになる。財政にも途上国型の「意図せざる国際化」が起こるのである。

オフショアに逃避した家計部門の資産が、これも国外に逃避した企業に、国外において循環する。国内の財政と企業のバランスシートは形骸化する。こうした典型的な途上国の資金循環パターンに日本も嵌り込む事になる。2010年は企業部門、家計部門、公的部門、さらに資金循環さえもが「意図せざる国際化」に追い込まれてゆくことが明確になる年。さらにそこからの出口はハイパーインフレしかないと観念する年。従って、2010年のポートフォリオ戦略は、とにかくキャッシュを厚く、流動性を重視しつつ、資産のキャピタル・フライトを本格的に準備して資産価値の保全を図る作業が基本になる、と考えている。

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