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2009年5月 9日 (土)

経済危機はもう終わったのか

 ダウ欧州50が久しぶりに懐かしさすら覚える2000台を回復し、日米ともに株価が急反騰している。ドルもいったん100円台を回復し、その後大きく崩れる気配はない。経済危機はもう終わったのか。リーマンショック直後の2008919日、日経平均はまだ11,900円、ドル円は105円台であったが、榊原英資はBloombergの取材に対して、年末までに円相場は100円を突破、日経平均株価は1万円の大台を割り込み、経済危機は長期化すると予想した。この「予言」は早くもドル円で一ヶ月強、日経平均で3週間後に実現し、日・米の株価も企業収益も経済指標も底なしの下り坂を転がり落ちた。日本の連休中にドルも株価も多少回復したとは言え、まだリーマンショック直後の水準には程遠い。今後の方向はブル、ベアどちらなのだろうか。

正常な経済状況の下では市場は均衡回復的に変動する。価格が上昇(下落)すれば需要が減少(増加)し、価格が均衡水準まで下落(上昇)する。ところがパニックが起ると市場変動が均衡破壊的となり、価格が上昇(下落)すればするほど逆に需要(供給)が大きくなり、価格が上値(下値)のメドがつかないままにどこまでも上昇(下落)して行く。かつてオイルショックが狂乱物価をもたらした時の日用品や食料品の価格、リーマンショック後の株価などがその典型だ。こうした均衡破壊的市場変動をもたらすパニックは、損失の規模が予見できない為に起る。

損失の原因には損害の程度と確率を計数的に把握できる「リスク」と、把握できない「不確実性(Uncertainty)」がある。「リスク」とは例えば「今後何年間の間に何%の確率で起きる」と予見されていて、その影響が何度もシミュレーションされ、対策も進められている東海地震。「不確実性」とは例えば全く予知も対策も行われていなかった阪神淡路大震災だ。リスク管理の第一歩は「不確実性」を「リスク」に変えてゆくことなのである。「リスク」が支配する市場では予想損失の大きさと確率がσ(シグマ、標準偏差)を用いて計数的に把握され、管理されているから、価格が均衡回復的に変動する。一方「不確実性」が支配する市場では予想損失の見当がつかないから、価格が均衡破壊的に変動する。長い間CDSはσで潜在損失の程度を管理できる「リスク」であると考えられてきた。ところがリーマンショック後、この「リスク」がσ管理の限界を飛び出した「不確実性」に転化してしまい、均衡破壊的な株価の下落をもたらしたのである。今後の方向を見定める上で、「不確実性」が「リスク」に変わったのか、そして市場変動が不可逆的な均衡破壊型から「上がれば下がり下がれば上がる」という均衡回復型に変わったのかの見極めがキーポイントとなる。

そこで再び日本の連休期間中の出来事をチェックしてみると、クライスラーがチャプター11を申請したことでビッグ3の今後の「筋道」が見え、また米国金融機関のストレス・テスト(潜在損失査定)が終わり、こちらも資本増強の「筋道」が見えた事が大変重要ではないかと思われる。損失の性質が、限度の見えない「不確実性」からσ管理が可能な「リスク」に変化する兆候が見えたのだ。もちろん経済危機はまだ終わっていない。株価は今後も経済ファンダメンタルズの変化を反映して乱高下するだろう。しかしながら、市場変動自体が均衡回復型に戻ってゆくとすれば、今後の価格下落局面ではこれまでとは逆に「売り」ではなく「買い」が正解、ということになる。

市場価格の変動が均衡破壊型から均衡回復型に変わるとすると、残るリスクファクターは何か。それはハイパーインフレである。各国ともなりふり構わず財政支出を拡大する為、財政赤字の辻褄を合わせる方法はもはやハイパーインフレしかない。パイパーインフレが顕在化するとき、市場変動は再びパニッキーな均衡破壊型に戻るだろう。ハイパーインフレはいつか必ずやって来ると覚悟して長期のポートを組まなければならないのである。

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