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2008年12月23日 (火)

2009年のポートフォリオ

多くの読者の方々から「2009年のポート・シナリオを早く出せ」と催促されているので、クリスマスを機会に激動の2008年を締めくくり、2009年を展望してみた。2008年を象徴する漢字は「変」だそうだが、2009年のキーワードは「負」(Negative)ではないかと考えている。各国・地域がそれぞれ一過性・循環性ではない構造的なマイナス要因を抱えていて、こうした負のバランスの変化をどう見るかによって2009年のポート戦略が決まる。

米国は三つの構造的な「負」を抱えて2009年をスタートする。一つは米国家計の負の貯蓄率だ。言うまでもなくこれが2008年の金融危機の根本原因である。20年間続いた米国家計の過剰消費は日本・中国を中心とする世界中の輸出を吸収して来たが、ようやく正常化過程に入りつつある。米国の消費者は20年前までの「安くて良い物を購入して長く使う」という消費態度に戻りつつあり、激減した米国の輸入はもう元の水準を回復することはない。二番目の「負」は米国産業、特に自動車産業のマイナスの遺産(レガシーコスト)だ。ビッグ3のキャッシュフロー不足は退職者を含む自社従業員に対する巨額の医療費支出に起因しており、こうしたレガシーコストはセダン一台当たり10万円をはるかに超えると言われる。通常のリストラや技術革新ではどうにもならない資金流出なのだ。米国は市場主義の下で、本来国家財政の機能であるべきこの種の支出を産業界に丸投げして来たのである。ビッグ3の破綻は米国の過剰消費正常化の当然の帰結にすぎないが、それが “Too big to fail” であると言うなら米国が自ら市場主義の旗を降ろすしかない。そして米国の三番目の「負」はソブリン格付けのAAAからの転落である。民間に対する巨額の財政資金の投入だけでなく、ファニー・フレディ等の準ソブリンも財政負担を急増させるが、経済に急ブレーキがかかった中国や原油価格の急落でオイルバブルの絶頂から転落しつつある中東産油国は、米国国債の購入どころか2009年には売り手とならざるを得ない。そして米国のソブリンデットがAAAから転落すれば、世界中のポートがドルと米国財務省証券の売却に走る。

日本は二つの構造的な「負」を背負って2009年を迎える。一つは貿易収支の赤字転落だ。これは米国の過剰消費解消の当然の帰結であり、貿易黒字の縮小と、それに伴って輸出産業から日本全体に波及する雇用の減少は、もう元に戻らない不可逆反応なのだ。もう一つの「負」は経済政策の機能不全である。衆議院解散・総選挙の結果はいずれにしても二党伯仲となるため、どこが政権与党となっても長期的ビジョンに立脚した安定的経済政策は望めない。日本経済の国際的評価は一段の低下を免れないだろう。

欧州の構造的な「負」は一つ。ユーロ崩壊の可能性だ。かつて知己の経済学者から「ユーロ圏のシニョレッジってどうなっているのだろう」と聞かれたことがあるが、欧州が自らその答えを出す時が来た。いや市場が既に答えを出したと言ってよいかも知れない。2008年初まで、ユーロ先発国間のベンチマーク(10年物国債)の利回り格差は0.1%以内が常態であったが、2008年後半に急拡大した。クリスマス時点でイタリア4.3%、フランス3.4%、ドイツ2.9%。既に欧州統一通貨ユーロは破綻しているのだ。もちろん経済対策の結果としての財政赤字の膨張と財政格差の拡大がその原因である。2009年はユーロの財政規律ルールが公式に放棄される年になるだろうが、そうなると統一通貨ユーロの維持は難しくなる。イタリアがユーロを離脱することになれば、フランスも続かざるを得なくなり、欧州に激震が走る。

では2009年の市場はどう展開するのだろうか。各国・地域がそれぞれ一過性・循環性ではなく構造的なマイナスを抱えているわけであるが、「負」の数は米国が3、日本が2、ユーロ圏が1。従って通貨価値の優劣は「負」の数の少ない順にユーロ、円、ドルという順番になりそうだ。またクリスマス時点でのベンチマーク利回りは英国3.1%、米国2.2%、日本1.2%。一時ドルと逆転していたユーロが現在では上記の通り再びドルを大きく上回っており、この面からもユーロの優位は明らかだ。ただし円投長期外債はやはり銘柄を選別したい。ユーロ離脱候補のイタリアは避け、ブンズ中心に考えるべきだ。また各通貨とも短期の政策金利は低位で推移するだろうが、長期債は需給から売られる。2009年はイールドカーブがスティープ化する可能性が非常に高いことを前提に債券ポートを組みたい。

2008年のマイポートは、9月のクラッシュまでにオルタナティブ系とエクイティ絡みをスクイズし、一部を円のFixed Incomeに乗り換えたところ、幸い円債価格が予想以上に上昇した。クラッシュ以降は為替と価格の共分散が高い長期外債に絞り、デュレーションを睨みつつ債券価格と為替の動向を追って、結局これもキャッシュ化した。かつてない高水準のキャッシュを抱えての越年になりそうだが、2008年通年のポートの毀損をちょうど1%にとどめる事ができた。マイポートのモットーは「果報は寝て待て」だが、2008年はそうは行かなかった。2009年も多分そうは行かない年になりそうである。

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