Sophie Milmanと桑田佳祐
初めてSophie Milmanの歌声と出会ったのは、JR東海が東海道新幹線の車内で乗客に提供している音楽番組であった。ジャズを純粋なジャズとして、またシャンソンを純粋なシャンソンとして、それぞれ情感豊かに歌い上げるこの女性歌手はいったい何者なのか。名前に一つのヒントがあった。Sophieとはエカチェリーナ2世(ロマノフ朝の第8代ロシア皇帝。在位1762-1796年)の娘時代の洗礼名であり、ロシア人にとっては馴染み深いものである。またMilmanと言えば代表的なユダヤ・ファミリーの一つだ。ロシアとユダヤ、英語とフランス語。多国籍性というより無国籍性を感じた。
アルバムを買って、ライナー・ノーツを読んで分かった。やはりロシア人とユダヤ人の血を共に受継いでいたのだ。Sophie Milmanはロシアに生まれ、7歳でイスラエルに移住。英語圏で育ち、ジャズに親しんだ。16歳でカナダに移住し、カナダ人としてフランス語圏で暮らすことになった。ロシア語、英語、フランス語を共に母国語としているカナダ人の歌手だったのである。アルバムを買ってはじめて美貌の持ち主であることも知った。
かつて桑田佳祐は、初めての中国公演のステージでストレスのあまり倒れたことがある。観客が全員席に就いたまま、曲が終わると粛々と拍手をするばかりで、いくら桑田が煽っても乗らなかったのである。桑田は記者会見で「世界は一つ、音楽に国境はない、と思っていたが嘘だった」と嘆いた。それはたしかに一つの真実だろう。だがSophie Milmanは音楽における国籍や出自、さらにジャンルの違いまでも、Sophie Milmanという一人の個性の中に見事に埋めこんで見せたのである。
参考: http://www.linusentertainment.com/sophiemilman2006/
http://www.bluenote.co.jp/jp/original/report/20080612-id000412.html
| 固定リンク
コメント
Blue Note でのSophie のLive に行ってきました。5回目の来日、うち大きなツアーとしては3回目(本人談)。まず開演30分前に各パートの足元にカンニング・ペーパーが配布されました。横から覗くと譜面ではなく曲順を書いた進行表でした。そしていよいよSophie本人の登場!ジャケットの印象とは全然違って、愛想の良い元気な健康優良児でした。カーメン・マクレエのようなステージをイメージしていたのでかなりビックリ。Agua de Beberでオープン、2枚のアルバム収録曲を中心にお馴染の曲が続き、アンコールもたっぷり聞かせてくれて楽しいステージでしたが、ロシア語・フランス語が聞けなかったのはちょっと残念でした。
投稿: ジェームス | 2008年6月12日 (木) 22時07分