« 2007年10月 | トップページ | 2008年2月 »

2008年1月25日 (金)

均衡回復的裁定と均衡破壊的裁定

 日経平均が下がれば円は売られる筈なのに、最近は逆にドル(対円)と日経平均が連動するように見えるのはなぜなのか、と学生から質問された。それは裁定が均衡破壊的に働いているからだ。

  パニックの起きていない平時の環境では、裁定は均衡回復的に働く。つまり価格が上がりすぎると買う人が減るから価格が下がって需給が均衡するのだ。一方過去のオイルショックの際に見られたように、パニック状態の下では価格が上がるほど人々はさらなる価格上昇を恐れて買い急ぐから、価格上昇がさらなる需要を喚起する為、価格が一段と上昇してゆく。均衡破壊的裁定が働くのだ。日本の経常収支は黒字であり、その分資本収支が赤字であるから、国内の投資家のトータル・ポジションはドル・ロングだ。従って現在のように株式市場がパニックとなり、多くの投資家がリスク量を増やしたくないと考えている場合は、日経平均が下落するほどドル・ロングを取り崩す動きが出る。この動きが続いている限りパニックは去っておらず、株式価格は均衡破壊的下落を続ける。一方投資家がパニックから解放されるとリスク量を増やしてもよいと考えるようになるから、日経平均が下落してもドル・ロングの取り崩しは起らなくなる。これはパニックが去って株式価格が均衡回復過程に入ったことを意味する。

 日本株のPBR(株価純資産倍率)が1に近付いている今、パニックが本当に去って株式価格が均衡回復過程に入ったのかどうかを判断する為には、学生が気付いた「ドルと日経平均との連動」が消失するかどうかを見ていればよいのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月24日 (木)

加齢の心理学

(1)人間の活動領域を丸い円(=外円)で表すと、活動的な人は大きな円、そうでない人は小さな円となる。

                                                               

(2)交友(男女関係を含む)とは円と円が重なること。大きい円と小さい円が重なると、大きい円の人にとっては自分の世界のほんの一部であっても、小さい円の人にとっては大きな比率、場合によっては全世界になる。

 

(3)さらにその内側にもう一つ円(=内円)があり、その人の私的領域や妥協できない価値観を表す。つまり人間の人格は二重丸の形になっている。内円のサイズも人それぞれだが、一般に東洋人は大きくて外円に近く、欧米人は小さいと言われている。

(4)内円が大きい人(例えば東洋人)同士は、ちょっと他人と活動領域を共有するだけで内円同士が重なり合うことに慣れており、それを期待している。一方内円が小さい人(例えば欧米人)同士は、相互にかなり多くの活動領域を共有しても内円同士は重ならない、と思っている。もちろん同じ年代の日本人であっても、内円が大きい人も小さい人もいる。

(5)内円が大きい人と小さい人との交友においては、相互の活動領域を相当程度共有しても内円が重なるとは限らず、この事が両者の間に違和感を生む。つまり内円の大きい人は「こんなに親しくしているのだから内円どうしが重なるはずなのに、何か水クサイ」と感じて相手との距離を詰めようとする。逆に内円の小さい人は、いくら活動領域が重なり合っていても、内円同士が接触することをウザッタイと感じている。

(6)さらに、加齢により外円(=活動領域)は小さくなるが内円のサイズは変わらない。このため内円同士が接触しやすくなり、一層違和感が生じやすくなって、交友が長い人同士であっても次第に相手をKYと感じるようになる。極端な場合は晩年になって長年の交友関係に終止符が打たれる結果に繋がる。

(7)こうした事を防ぐ為には、自分の外円・内円のサイズを十分自覚し、他人のサイズも十分認識して距離のバランスを取る事が有用。若い頃よりも相手との間に距離を置くようにすることが、友好関係を永続きさせる秘訣である。 

【参考文献】S.フロイト「精神分析入門」全巻

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月 2日 (水)

2007年はユーロ元年か

2007年は国際基軸通貨が米ドルからユーロに交代した年として後世に記憶されることになるだろう。

国際基軸通貨はいろいろな意味で使われる概念だが、ここでは(1)ペグ度(公的通貨制度を含めた、他の通貨がペグする度合いの強さ)、(2)使用度(公的通貨制度とは別に、民間セクターにおける国際取引において実際に使われる度合い)という二つの側面に注目して見よう。

(1)ペグ度。ドル・ペグ圏はペグの強さの順に中南米圏、中国圏、中東圏、アセアン圏だ。このうち中南米圏は経済自体が米国と一体化しているためドル・ペグが最も自然である。中国圏は米国自身が対中貿易不均衡を是正するため人民元のドル・ペグを何とか外そうと四苦八苦しているが、中国サイドを追い込め切れていない。また香港ドルは中国の一国二通貨制の下で資本収支通貨を担う位置付けであり、中国がドル・ペグ(カレンシー・ボード)を外さない。つまり中国圏のドル・ペグは専ら中国サイドの都合によるもので、中国がドル離脱を決めた瞬間に崩れる運命にある。アセアン圏は1997年の通貨危機以降ハード・ペグからソフト・ペグに転換してきた。そして2007年、ドル・ペグ圏最後の砦である中東圏に離脱の動きが出た。クウェート、シリアが相次いでドル・ペグを離れたのである。

参照:2007年6月15日「中東のSDRペグとこの夏のポート操作」

http://professor-snape.txt-nifty.com/investors_eye/2007/06/post_bce3.html

さらにIMFによれば、2007年9月末時点で世界の準備通貨に占めるドルの割合は63.8%と、6月末時点の65%から大きく縮小し、1999年の統計開始以来最低となった。こうした諸点を総合的に考えると、将来のドル・ペグ圏は中南米だけになることが明確になって来たようである。

(2)使用度。多くの途上国では民間セクターが合法・違法を問わず事実上のドル本位制を採り、主に不動産・高額耐久財・レントやホテルの室料・風俗産業遊興料などがドル建となっている。ドルに金・貴金属に準じた価値貯蔵機能が認められる為だが、これが崩れ始めたのである。スーパー・モデルのジゼル・ブンチェンが米国P&G社に対し、ヘアケア商品広告出演契約をドル建てからユーロ建てに変更するように要求した。インドの世界遺産であるタージ・マハルが入場料を米ドルからインド・ルピー建てに変更した。中東ではオイル長者が激増しており欧米の高級車が飛ぶように売れているが、その建値はかつてのドルではなく今やユーロだ。民間がドルの価値貯蔵機能に見切りをつけ始めたのだ。しかも「ペグ度」におけるドル離れはペグの対象がドルからSDRなどのバスケットに変わるにすぎないケースが多いが、「使用度」においてはドル離れの受け皿が圧倒的にユーロなのだ。ユーロの価値貯蔵機能がドルを上回っていると民間セクターが判断したことになる。

国際基軸通貨が米ドルからユーロに交代した理由は、循環的な経済問題であるサブ・プライムローンではなく、構造的な米国の国際的信認の低下である。欧州でも日本でも親米政権が退陣を余儀なくされた。最後のドル・ペグ圏である中南米は既に反米政権の下にある。米国内ではマイノリティ層にイスラム化が急速に進行している。かつての円ドル委員会方式が中国には通用しない事もはっきりした。誰も米国の言う通りにはならなくなって来たのだ。米国が求心力を失いパックス・アメリカーナの終焉が見えた2007年、ドルが国際基軸通貨の座を下りたのは当然であった。長期ポートはドル・ショート、ユーロ・ロングが正解である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年10月 | トップページ | 2008年2月 »