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2007年6月15日 (金)

中東のSDRペグとこの夏のポート操作

 6月4日、シリア中央銀行はシリア・ポンドのドル・ペグを廃止し、SDRに連動させる方針を明らかにした。 つい二週間前の5月20にはクウェートがドル・ペグからバスケット・リンクへ移行したばかりだ。ドロシー・ギャッサ(INGバンク)によると、こうした動きはドル安がインフレにつながっている状況を背景としており、次にドル・ペグを廃止するのはアラブ首長国連邦だと予想している(ブルームバーグ「シリア、自国通貨の対ドル・ペッグ制を廃止」、6月4日)。想起されるのは1978年後半の世界経済の状況だ。

当時も現在と同様原油価格が高騰し、米国でインフレが亢進してドルが急落していた。中東産油各国はドル安の影響を回避すべく、原油の輸出建値通貨をドルからSDRにシフトすることを真剣に検討しはじめ、民間セクターではSDRの為替取引、ユーロSDR取引の試行が活発に行われた。小職が世界初のニューヨーク市場におけるユーロSDRデポ・スキームを開発したのはまさにこの時期だ。ドル安とインフレに耐えられなくなった米国は1978年11月1日、公定歩合を一気に2%引き上げ、強い金融引き締めに転じると同時に巨額の介入資金を投入して各国との協調介入を実施し、ドル防衛を図った(カーター・ショック)。この結果ドルは1985年のプラザ合意に至るまで、長い上昇局面を迎えたのだ。現在も原油価格が高騰し、中東産油国のドル離れ・SDR志向が現実化している。いつか来た道は果して繰返されるのだろうか。そしてポート操作はどう対処すればよいのだろう。鍵を握るのは円だ。

当時と現在との決定的な違いは円の動きである。当時は円も対ドルで大きく上昇していた。1977年はじめに240円台であったドルは、カーター・ショックの直前には175円まで下落していたのだ。ところが今回のドル安は円だけを置き去りにして進行しており、円は単独安だ。対ドル、対ユーロのみならず対豪ドルでも103円台と、個人的には笑いが止まらない。この背景にあるのは円のキャリー・トレードだけではなく、日本の地政学リスク(日朝関係の緊張や東アジアにおける日本の孤立)と安倍B級内閣への国際的不信だ。円債の暴落がそれを象徴している。このうち地政学リスクは短期的にどうにもならないが、円のキャリー・トレード解消と日本の政権交代は世界中で積み上がった円ショートが一気に巻き戻される契機となりうる。

この意味からも政局夏の陣=参院選からは目が離せない。カーター・ショックの直前、「カーターがテレビに映るたびにドルが売られる」と言われたものだ。現在の日本でもこれに似たセンチメントが醸成されつつある。参院選が政権交代につながるようであれば、円のネジレが解消されてドル安と円高とが並存する展開がありうる。この夏は円ショートのポートを勝ち逃げするタイミングをしっかりと見極めたいものである。

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