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2007年6月24日 (日)

世界同時長期金利上昇は悪夢の前兆なのか

JGBのイールドが急上昇し、2年が1%、5年が1.5%、10年が1.9%と、覚えやすいイールド・カーブになった。長期金利は日本だけでなく世界中で上昇しており、10年国債のイールドはTNが5.2%と久方ぶりの5%超え。ブンズも4.6%を超えている。こうした世界同時長期金利高は、もしも一部のアナリストが指摘するように予想コアインフレ率の世界的な上昇から来ているとするなら、悪夢が示現する前にポートを全面的に組替えなければならない。予想コアインフレ率が上昇しているのであれば、Fixed IncomeとEquityとのコンベンショナルなトレード・オフの関係に変化が生じ、また長期債ほど売られるからイールド・カーブがスティープ化する筈である。実際はどうだろう。

TN(10)はイールドが上がったとはいえ、5%台は昨年5-6月と同じ水準。この時期以降、1999年初以来維持していたNYダウとのトレード・オフが消失し、EquityFixed Incomeも買われてきた。特にEquityは絶好調で、NYダウは4月以来史上最高値を更新し続けている。NYダウの大台替りの経緯を振り返ってみると

9000ドル台:98年4月6日 (大台乗せまでにかかった期間:9ヶ月)

10000ドル台:99年3月29日(11ヶ月)

11000ドル台:99年5月3日(1ヶ月)

12000ドル台:061019日(7年5ヶ月)

13000ドル台:07年4月25日(6ヶ月)

と、11000ドル台から12000ドル台乗せまで約7年半を要したのに対し、13000台乗せはわずか半年で達成したのだ。この間Fixed Incomeも買われていたので、予想コアインフレ率が低位に留まっていたことがわかる。今回のTNイールド上昇は、快走するEquityとのトレード・オフのギャップを後追いで多少埋めただけに過ぎないのだ。

ブンズの4%台後半のイールドは2003年第4四半期の水準。それ以来2年間にわたってブンズ利回りは下落(価格上昇)し、2005年第4四半期に3%台前半をつけたあと上昇に転じた。現在のイールド・アップもその延長線上にあり、この間絵に描いたようなEquityとのトレード・オフ関係を維持している。ダウ欧州50は今や2000年前半につけた史上高値を更新、4000台目前まで上昇しているのだ。

現在のJGB(10)は昨年4月と同じ水準。一方現在の日経2251年前から約17%高い水準だが、最大の買い手である外人投資家から見ると円が1年前と比べて8%下落しているので、ドルベースでは一桁の上昇にすぎず、米国・欧州と異なりまだ史上高値更新には程遠い水準にある。

こうして見てゆくと、欧米ではEquityの上昇が先行し、Fixed Incomeが後追いで下落(イールドが上昇)するトレンドが継続しているにすぎないことがわかる。一方日本のEquity価格の現水準は、まだかつての過小評価の修正過程にあり、従ってFixed Incomeが大きく売り込まれる局面には入っていないと考えられる。いずれにせよ今回の世界同時長期金利高はFixed IncomeとEquityとのトレード・オフの循環の中で起きているに過ぎず、また日・米・欧ともにイールド・カーブがむしろフラット化しているところから、予想コアインフレ率の上昇を背景とするものではないと考えて差し支えなかろう。また日・米・欧の長期金利差には著変がないため、為替への影響も限定的なものにとどまるから、ポート組み替えは拙速よりも慎重を旨とすべきであろうと考えている。

                                                                                

(追記)2007年7月19日、NYダウが14,000を達成。今回はわずか3ヶ月での大台替わりだ。ダウ欧州50も4,000目前まで上昇していて、日経平均の出遅れが一段とはっきりしてきた。上記のトレンドが継続していることが再確認されたと言える。

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2007年6月20日 (水)

環境ビジネスのキーワード:LOHAS

 6月は国際的なカンファランスに参加する機会が2回あった。一つはハイリゲンダム・サミットのシェルパを務めた河野外務審議官の報告会。もう一つはOECDが東京で開催したグローバル・バリュー・チェーンにおけるSMEsの役割に関するフォーラムである。そしてこの相互に全く独立した二つのカンファランスが発信した共通のキー・ワードがロハスであった。

 

 河野ラウンド・テーブルでは質疑を含めて一時間半にわたり、舞台裏を含めたハイリゲンダム・サミットのエッセンスが紹介され、地球環境問題が今後数年間の国際社会の最優先アジェンダであること、来年の洞爺湖サミットでもメイン・テーマとなることが明らかにされた。さらに地球環境問題の今後の展開の一つのマテリアルなパースペクティブが民間ビジネスとのリンケージであり、グローバルな消費者の嗜好の変化を鋭く捉えたビジネス・モデルとしてトヨタのエコ・カーの商業的成功が紹介された。一時間半のこのセッションにおいて、何と拉致のラの字も出なかったのである。

 一方OECDフォーラムは、OECDが膨大な時間と費用をかけて実施した、新しいビジネス・モデルとしてのグローバル化するSMEsに関する調査の総括であった。SMEに関する多くの事例研究が発表されたが、ここでもグローバルなトレンドは消費者のエコロジー・コンシャスなライフ・スタイルへの嗜好の高まりであり、かかるマクロ・トレンドをふまえた上で各国ごとのローカル・バージョンを設計し、商品化するSMEのロハス・ビジネスの事例が数多く紹介された。「グローカル」は自分の造語だと主張する向きが急増しているが、その中身は「ロハス」である。スポーツ、健康、エコロジー、ロハス・ビジネス。これらは、これからの時代のベクトルを形成する共通のキー・ワードなのだ。

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2007年6月15日 (金)

中東のSDRペグとこの夏のポート操作

 6月4日、シリア中央銀行はシリア・ポンドのドル・ペグを廃止し、SDRに連動させる方針を明らかにした。 つい二週間前の5月20にはクウェートがドル・ペグからバスケット・リンクへ移行したばかりだ。ドロシー・ギャッサ(INGバンク)によると、こうした動きはドル安がインフレにつながっている状況を背景としており、次にドル・ペグを廃止するのはアラブ首長国連邦だと予想している(ブルームバーグ「シリア、自国通貨の対ドル・ペッグ制を廃止」、6月4日)。想起されるのは1978年後半の世界経済の状況だ。

当時も現在と同様原油価格が高騰し、米国でインフレが亢進してドルが急落していた。中東産油各国はドル安の影響を回避すべく、原油の輸出建値通貨をドルからSDRにシフトすることを真剣に検討しはじめ、民間セクターではSDRの為替取引、ユーロSDR取引の試行が活発に行われた。小職が世界初のニューヨーク市場におけるユーロSDRデポ・スキームを開発したのはまさにこの時期だ。ドル安とインフレに耐えられなくなった米国は1978年11月1日、公定歩合を一気に2%引き上げ、強い金融引き締めに転じると同時に巨額の介入資金を投入して各国との協調介入を実施し、ドル防衛を図った(カーター・ショック)。この結果ドルは1985年のプラザ合意に至るまで、長い上昇局面を迎えたのだ。現在も原油価格が高騰し、中東産油国のドル離れ・SDR志向が現実化している。いつか来た道は果して繰返されるのだろうか。そしてポート操作はどう対処すればよいのだろう。鍵を握るのは円だ。

当時と現在との決定的な違いは円の動きである。当時は円も対ドルで大きく上昇していた。1977年はじめに240円台であったドルは、カーター・ショックの直前には175円まで下落していたのだ。ところが今回のドル安は円だけを置き去りにして進行しており、円は単独安だ。対ドル、対ユーロのみならず対豪ドルでも103円台と、個人的には笑いが止まらない。この背景にあるのは円のキャリー・トレードだけではなく、日本の地政学リスク(日朝関係の緊張や東アジアにおける日本の孤立)と安倍B級内閣への国際的不信だ。円債の暴落がそれを象徴している。このうち地政学リスクは短期的にどうにもならないが、円のキャリー・トレード解消と日本の政権交代は世界中で積み上がった円ショートが一気に巻き戻される契機となりうる。

この意味からも政局夏の陣=参院選からは目が離せない。カーター・ショックの直前、「カーターがテレビに映るたびにドルが売られる」と言われたものだ。現在の日本でもこれに似たセンチメントが醸成されつつある。参院選が政権交代につながるようであれば、円のネジレが解消されてドル安と円高とが並存する展開がありうる。この夏は円ショートのポートを勝ち逃げするタイミングをしっかりと見極めたいものである。

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