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2006年10月18日 (水)

拡大EUは「大ローマ」の復興なのか

古代ローマは東西に分裂したあと滅亡した。拡大EUとは、旧東西ローマの再統合を通じたキリスト教圏としての「大ローマ」の復興なのではなかろうか。

 古代ローマ皇帝としてキリスト教を公認したコンスタンティヌス大帝は西暦330年、ローマの首都をビザンティウムに移し、コンスタンティノポリス(現イスタンブール)と名を改めた。391年テオドシウス大帝がキリスト教を国教化するが、395年にローマ帝国は東西に分裂する。476年に西ローマ帝国が滅亡し、東ローマはギリシア正教(東方教会)国家ビザンチン帝国として東に勢力を拡大する。800年にカールがローマ教皇レオ3世から西ローマ皇帝として戴冠し、西ローマ帝国がキリスト教国家として復活したものの、カールの孫の代に三分割されて現在のドイツ、フランス、イタリアの原型が形成される。一方東ローマ帝国(ビザンチン帝国)は1453年に回教徒によって滅ぼされた。

 さて現代。EUは2004年5月に新たな10カ国が加わり、25カ国へと拡大した。2007年1月にはブルガリアとルーマニアが加盟予定で、EUは27カ国体制となる事が決まっている。さらに今後クロアチア、マケドニア旧ユーゴスラヴィア、トルコが加盟交渉に向けて準備を進めている。これら2004年5月以降新規加盟(候補国を含む)の15カ国を宗教・宗派別に分類すると次の通りとなる。

キリスト教・カトリック(9カ国):チェコ、ラトヴィア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロヴェニア、スロヴァキア、クロアチア
 
キリスト教・東方教会系(4カ国):キプロス、ブルガリア、ルーマニア、マケドニア旧ユーゴスラヴィア

キリスト教・プロテスタント〈1カ国〉:エストニア

イスラム教〈1カ国〉:トルコ

そしてこの事から次の事実が浮かび上がって来る。

・元々のEU15カ国はもちろんのこと、拡大EUの新規メンバーもトルコを除いてすべてキリスト教国である。

・EU15カ国のうち東方教会系の国はギリシアだけであるが、拡大EUにはさらに4カ国が名を連ねる。東方教会圏の諸国は歴史的にも、また現代においてもイスラム教徒グループとの軋轢を国内に抱えているが、EUはこうした東方教会圏に向って拡大している。東ローマ帝国(ビザンツ)の復活なのだ。

 拡大EUはどこに行きつくのだろう。EUの東方への拡大の行く手に見えてくるのは世界最大の東方教会系国家ロシアである。そうなると復活する東ローマ帝国の東端の領海は日本の領海に接することになる。そして西ローマ帝国もローマ・カトリック教会圏として旧ソ連圏に拡大してきたのだ。拡大EUの行きつく先は旧東西ローマの統合、そしてキリスト教圏としての「大ローマ」の、ユーラシア全域にわたる復興ではないだろうか。

 やはりユーロの長期ポジションはロングしかあり得ないだろう

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2006年10月14日 (土)

コーランの経済合理性

 経済合理性(Economic Viability)を欠いたものは持続可能(Sustainable) ではない。ほとんどの宗教上のタブーや規範はそれぞれの教典に由来するが、一方で実は経済合理性にも裏付けられていることが多いのだ。例えばヒンドゥー教徒は牛を聖なる動物として大切にし、食用にしないが、牛は食肉にするよりもミルクから乳製品を作ったり農耕に使う方がはるかに生産性が高いことが知られている。では、ユニークな規範が多いイスラム教の教典であるコーランには経済合理性があるのだろうか。

1.断食

 イスラム教徒は毎年約1ヶ月間にわたって、日の出から日没までの間一切何も口にしない断食を行う。だが日没後一人で食事をとる人はほとんどおらず、毎日親族が一堂に会して大人数で盛大な会食が行われるのが常だ。そして断食月明けは、盆と正月が一緒に来たような盛り上りの中で連日大宴会となる。断食月以外でも、毎週金曜日はアッラーに祈りを捧げる大切な日であり、その前日である木曜日の夜には親族が一堂に集う大会食が行われる。断食月は、一族が一堂に会しての盛大な会食の機会を提供しているのだ。そしてこうした大会食の費用は、一族の中で最も成功した裕福な者が負担している。「金持ちのおじさんのおごり」なのだ。断食は豊かな者がそうでない者に施しを行う所得再分配の仕組みなのである。

2.一夫多妻制
 
 イスラム教徒の男性は4人まで妻を娶ることが許されている。これもまた、豊かな者がそうでない者の生活の面倒を見るという、所得再分配の仕組みなのだ。もちろん所得再分配は財政の機能であるが、イスラム教が生活資源の乏しい砂漠の民の信仰としてスタートしたという事実を忘れてはいけない。砂漠の民の生活には財政は十分機能せず、それに代る所得再分配の仕組みが必要であった。コーランがその役割を果したのである。

3.豚と犬の禁忌
 
 イスラム教徒は豚を穢れたものとして口にしない。同じ食物に関するタブーでも、ヒンドゥー教徒が牛を聖なる動物として大切にするのに対し、イスラム教徒は豚を忌避するのだ。そしてこの事の背後にも砂漠の民の生活の経済合理性が存在する。豚は、そして同じくイスラム教徒が忌避する犬も、家畜として養うためには残飯が必要だが、砂漠を移動する生活には残飯を残す余裕はない。草原では牛も羊も鶏も、放し飼いにしておけば自分で餌を採って勝手に育つが、砂漠ではそういう訳には行かないのだ。

 コーランは、実はかなりの経済合理性を包含しているのである。

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2006年10月 4日 (水)

Spinning Wheel

1969年2月に全米ヒット・チャート第2位を記録したBlood, Sweat & Tearsのヒット曲" Spinning Wheel"の歌詞は"What Goes Up, Must Come Down" というフレーズで始まる(David Clayton-Thomas作詞)。ニューヨーク原油先物相場(WTI)は7月14日に市場最高値78.40ドル/バレルを付けたが、ブルームバーグによると本日(10月4日)の時間外取引で58ドル台へと下落している。今回の油価高騰は過去2回の石油ショックとは異なり、供給サイドのネックから発生したコスト・プッシュ型ではなく、中国・米国の好況によるディマンド・プル型だ。好況・不況は循環するから、今回の油価高騰はいずれ冷める、と予想しておいたが、事実その通りの展開になった(下記の過去ログ2件参照)。フローの需給には"What Goes Up, Must Come Down"がよく当てはまるのだ。

 だが、ストック調整による需給の変化は一方通行になる。経済外的要因から原油の供給構造が変わってしまった為に起きた過去2回の石油ショックや、昨年後半の世界規模での日本株の過小評価是正は、いずれもストック調整であったから"What Goes Up, Never Comes Down" だったのである。今需給はフローで動いているのか、それともストックで動いているのか。この見極めがとても重要であることを、ゼミナールBの開講にあたって新ゼミ生たちに歓迎メッセージに代えて伝えておく事としたい。

参照ログ:
http://professor-snape.txt-nifty.com/investors_eye/2006/05/post_8141.html

http://professor-snape.txt-nifty.com/investors_eye/2005/08/post_13d0.html

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