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2006年6月 6日 (火)

インサイダー取引とオフサイド・トラップ

 村上ファンドはどこが悪くて立件されたのか。来週のゼミで誰かが必ず話題にすると思うので、議論が散逸しないようにあらかじめポイントを整理しておこう。尚ゼミ生はライブドア立件に関する次のバックナンバーも見ておくこと。

2006年1月18日 「地検特捜部の親指」
2006年1月19日「マックスバリュとライブドア」
2006年1月23日 「ライブドアのどこが悪い?」

ポイント(1)地検特捜部の村上立件の動機は何か
 
 東京地検特捜部の大鶴基成部長は、検事を志す人々に検察の仕事を紹介する法務省のウェブサイト上で「闇の不正と闘う」と題して次のように述べている。

「額に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち、法令を遵守して経済活動を行っている企業などが、出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならないのです。」
http://www.moj.go.jp/KANBOU/KENJI/kenji02-01.html

 この発言にあなたは賛同するか、それとも違和感があるだろうか。何か違和感があるとすると、それはおそらく大上段に振りかぶった「闇の不正と闘う」という意気込みと刑量とのアンバランスだろう。村上が問われる証券取引法違反の刑事罰は3年以下の懲役又は三千万円以下の罰金にすぎず、またライブドア・村上ファンドいずれの場合も、大きな損失を被ったのはリスクを百も承知のプロの投資家であり、耐震強度偽装事件などに比べると一般市民の被害は小さい。だから、自らを「闇の不正と闘う」と使命付ける地検特捜部のターゲットが「闇の不正」をはたらいた堀江や村上の処罰にすぎないとすると、いかにも仕事が軽すぎるのだ。むしろ地検特捜部の真のターゲットは堀江個人・村上個人の犯罪の摘発ではなく、カッコつきの「時価総額経営」「株主主権」「コーポレート・ガバナンス」といった、エスタブリッシュメントにとっての「目の上のタンコブ」を退治することだったのではないだろうか。

ポイント(2)村上ファンドは今後どうなるのか

 投資家は単純にリターンを見て村上ファンドを買っていたのであり、特に日本の「コーポレート・ガバナンス」のあり方を変革する事を支持していたわけではないから、立件を機に利益を確定してExitするだろう。解約率は100%近くに達すると思われ、村上個人は微刑に終っても村上ファンドは地検特捜部の狙い通り退治されて消滅するものと思われる。

ポイント(3)村上はなぜ単純な違法行為を犯したのか

 ライブドアの違法行為の本質は自社株の株価上昇を自社の収益として計上したことであり、その為の手段として投資事業組合や株式分割、粉飾決算といった凝った仕組みが使われたが、村上ファンドの違法行為は誰の目にも明らかなインサイダー取引である。「プロ中のプロ」を自認する村上がなぜこのような単純な違法行為を犯したのか。オフサイド・ルールを知らないサッカー選手はいないのにオフサイドを取られるのは、オフサイド・トラップに嵌るからだ。村上立件の契機は堀江・宮内の供述だが、彼らを誘導してディフェンス・ラインを上げさせた勢力があったのではないだろうか。

 キャリアの法曹集団である地検特捜部が守ろうとしている権益は何だろう。その背後には「エスタブリッシュメント」という真の巨大な「闇」が見え隠れする。

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