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2006年5月 7日 (日)

大型連休明けのポートフォリオ戦略

 大型連休中に、中長期的ポートフォリオの組立てに影響する事象がいくつか生起した。共通項は「ドル離れ」である。

 外国為替市場ではドルが下げ足を速め、対円では円安への通過点であった昨年9月以来の112円台、対ユーロでは史上最安値を更新する1.27台だ。昨年来このブログで繰り返し予想して来た通り、こうした投資家のドル離れの背景には米国と欧州・日本の景気循環の時間差がある。米国では住宅を中心とする不動産が牽引して来た景気に翳りが見え、また4月の雇用統計で雇用者の増加幅が予想を下回った為、金融市場では2004年央以来続いたFF金利引上げの終了に向けたカウント・ダウンが始まっている。一方欧州はインフレ予防的引締めに入ったばかりでまだ利上げ途上。日本はようやくデフレから脱却してこれから金利が本格的な上昇局面に入る。現在のベンチマーク(10年国債の利回り)はドルが5%、ユーロが4%、円が2%だが、年初来それぞれ約1%ずつ上昇して来たので各通貨間の金利差には大きな変化がなかった。だが今後はドル金利が下落し、ユーロと円の金利が上昇して長期金利差が縮小するからドルが下落する。加えて円はこれまでゼロ金利であった為、キャリートレード解消に伴う買戻しが起る。

 だた、ここまではあくまでもフロー・ベースのドル安要因の話であり、上がったものはいつか下がり、下がったものはいつか上がるというサイクルの中での出来事にすぎない。しかしながら連休中にストックベースでの不可逆的・構造的なドル離れの「芽」が現実化し始めた事に注意しておく必要がある。チェイニーの「新冷戦宣言」だ。

 チェイニー副大統領のリトアニアにおけるロシア批判発言が大きな波紋を呼んでいる。5月4日、チェイニーは訪問先のリトアニアにおいて、旧社会主義圏から親欧米路線に転じたウクライナ、グルジア、ポーランド、ブルガリア、ルーマニア、モルドバなど九カ国の首脳を前に、ロシアが民主化の流れに逆行していることやガス生産国の立場を政治的に利用していると演説。FTは5日、6日と連続して一面でロシアのメディアの反応を紹介し、第2次大戦後チャーチル英前首相が行った「鉄のカーテン」の演説に比肩する冷戦再開宣言ではないかと論評している。たしかにチェイニーは石油・天然ガスを人質に取った脅迫行為という激しい言葉でロシアを非難しており、喧嘩を売ったように見えるが、こうしたアメリカの焦りの背景には米国包囲網がジワジワと狭まって来ている状況がある。アメリカの裏庭である中南米では軒並み反米左翼政権が誕生し、英国では親米労働党政権が国民の支持を失ってブレア政権がピンチだ。大規模な米軍基地がイランを睨むギリシャでは史上最大規模の反米デモが起った。親米小泉政権も任期切れが迫ってレーム・ダック化しつつあり、米軍基地移転問題やBSE問題を抱えてあまり頼りにならなくなった。最大の貿易赤字相手国である中国はますます強大化し、いくら人民元の切上げ圧力をかけても、中国はかつての日本とは違ってアメリカの言うことを聞こうとしない。

 そう。みんなアメリカの言う事を聞かなくなってきたのだ。パクス・アメリカーナが終ろうとしている。こうした動きは景気循環によるフローの変化とは比較にならない規模のストック調整を引起し、市場は不可逆的に動く。フロー要因による市場変動は「まだ」は「もう」の世界だが、ストック要因による市場変動は「もう」は「まだ」の世界だ。それでもドルの長期債ポートは、価格上昇が円高をある程度相殺するから、過去に仕込んだハイ・クーポン物をあわててロスカットする必要はないが、ドルが反発する局面では為替だけ先物でドルをショートにしておくとよいだろう。新しい仕込みは、やはり利上げ局面に入った豪ドルの長期債を金利差狙いで視野に入れたい。但し真中にストライクが来るまではバットを振らずに、為替もプライスも十分引付けたいところだ。

 ある若い読者から「要は、相場観はファンダメンタルズ、仕掛けはテクニカルと言いたいのですか」と聞かれたことがある。正にその通り、それこそが果報を寝て待つ極意であると考えている。

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