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2006年2月 2日 (木)

所得格差とジニ係数(その1)

 1月20日召集の通常国会でわが国の所得格差が拡大しているのではないかという問題が提起され、所得格差の国際比較がさまざまな議論を呼ぶ中で、ジニ係数がにわかに脚光を浴びた。初学者に対して「経済学は面白いぞ」という事を講義で教える時、材料の一つとして私もジニ係数をよく使うが、一般にはあまり馴染みのない概念ではないだろうか。ジニ係数とは所得分配の平等度、つまり貧富の差の大小を示す指標であり、全員の所得が同額になる状態をゼロ、1人が全所得を独占している状態を1と表す。2次元グラフにおける45度線とロレンツ曲線で囲まれた面積を2倍したものの事なのであるが、たしかに少々わかりにくい。例えば厚生労働省の所得再分配調査によるわが国のジニ係数は1980年の0.32が2001年の0.38まで上昇しているのだが、この数字だけを見てどの程度所得格差が拡大したのか具体的なイメージを描ける人はほとんどいないのではなかろうか。そこで、もう少し分りやすい指標を使って所得格差を国際比較してみよう。

 使用する指標は、所得上位10%層(所得が多い方から数えて10%までの人たち)の合計所得が総所得全体に占める割合である。この数字が大きいほど所得格差が大きいことを表わす。もしこの数字が100%だとすると、国民の10%にあたる人々だけですべての所得を独占していて、残りの90%の人々は所得がない、という極端な所得格差の存在を示す。逆にこの数字が10%だとすると、人口の10%にあたる人々の所得が国全体の所得の10%でもあるから、所得格差のない社会であるということになるわけだ。世界銀行のWorld Development Indicators Database 2005には世界123カ国の計数が掲載されているので、これを使って国際比較をしてみよう。測定された時期が国ごとにかなりバラバラなので大雑把な比較になるが、それでも興味深い事実が浮び上って来る。

 所得格差が大きい順にランキングを作ってみると、上位は中南米が独占する。グアテマラ48.3%、チリ47.0%、ブラジル46.9%、コロンビア46.5%、メキシコ43.1%、アルゼンチン38.9%、ペルー37.2%。アジアの主要国は34位にフィリピンの36.3%が顔を出し、タイ33.8%、中国 33.1%、シンガポール32.8%と続く。49位にアメリカが29.9%で登場し、その後にやっと欧州の主要国が出てくる。ポルトガル29.8%、イギリス 28.5%、イタリア26.8%、スイス 25.2%、フランス 25.1%、ドイツ 22.1%。ランキングの最後には北欧諸国が並ぶが、日本は123カ国中122位の21.7%でスウェーデンとデンマークに挟まれている。日本は所得の多いほうから10%までの人達の所得が全体の所得の20%強を占めているにすぎず、世界で2番目に所得格差が小さい国であるということになるのだが、本当にそう考えてよいのだろうか。また、なぜ中南米諸国の所得分配はアジアよりも不平等なのだろうか。次回はこうした点について更に考えて見る。(その2に続く)

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