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2006年1月 5日 (木)

2006年のスタートはクウォドルプル高

 2006年の市場はかつて前例のない幕開けとなった。円、株価、債券価格のトリプル高に商品高が加わったクウォドルプル高だ。しかも株価と債券価格のトレード・オフの消滅は日本だけではなく欧州でも米国でも起きており、さらに為替も商品も国際市場価格であるから、このクウォドルプル高は日本だけではなくグローバルな規模で起きている現象だということがわかる。これは一体何を意味するのだろうか。そして単純に喜んでいていいことなのだろうか。ファクターごとに調べてみよう。

 まず株価。2005年は日経平均が40%(ドル・ベースでは22%)、ダウ欧州50が20%上昇した一方でNYダウは僅かながらマイナスであったが、2006年初の株高を牽引したのはNYであった。また2005年には日・米・欧いずれにおいても株価が債券価格とトレード・オフの関係にあり、債券からエクィティへの資金シフトがグローバルに進行したが、年末からは債券に資金が戻り始め、年明け後もそのトレンドが継続した。1月4日の10年物国債の水準はJGBが1.45%、米国TNが4.35%、ブンズが3.28%と軒並み価格上昇(利回り低下)。米国TNは2005年の利回りのピークから80bpも下の水準なのだ。J-Reitの勝ち組の投資口価格が急騰していることからもFixed  Incomeに資金が戻っていることがわかる。2005年とは異なりエクイティと債券がシーソーの関係ではなく、どちらも買われているのだ。なぜ資金の流れがかわったのだろうか。

 さらに商品市況も高騰している。今年の世界的な厳冬やロシア・ウクライナ問題が需給に響いている原油だけでなく資源・素材価格が一様に高騰している。非鉄金属(銅)も高値を追っており、金に至っては1981年以来の高値だ。だが債券価格は上昇しており期待インフレ率が上昇しているわけではないから、商品市況の高騰は実需期待によるものと考えざるを得ないだろう。

 為替は円高というよりドル安で、ユーロが対円で久しぶりに140円台を回復したことからもわかるように大きな流れは「ドルからユーロへ」だ。円はおこぼれに預っているだけで、これは2005年前半と同じ構図である。だからクウォドルプル高といっても実は「トリプル高」プラス「ドル安」なのだ。ドルから資金が逃げ出しているのはなぜなのだろうか。

 こうした疑問を解き明かすキーワードは「不動産」だ。2005年の金融市場における最重要キーワードを一つだけ挙げるとすれば、それは米国の住宅バブルだろう。MEWが生み出した米国の購買力が世界経済の機関車となってグローバルな規模でエクイティに資金を誘引していたのだ。ところが2005年第4四半期に至り米国の新規住宅着工件数が失速し、FOMC議事録も利上げのペースダウンを示唆したところから、ドル金利が債券価格サイドではなく短期政策金利サイドを震源地として下落し、ドルが下落しはじめた。また同じ理由、つまり利上げのペース・ダウンへの期待が株価を押し上げたのだから、株価と債券価格とのトレード・オフが断ち切られたのは当然だったのである。主要各国の経済のインフレ期待が押さえ込まれ(債券価格の上昇)、持続可能な成長ペースへのソフト・ランディングへの期待(株価の上昇)が資源・素材への需要(商品市況の上昇)を生んでいる…こう考えると、2006年のクウォドルプル高はグローバルな不動産ブームの一服感と表裏一体であることがわかる。事実2006年初、続騰する日経平均を尻目に大手不動産株は昨年末のピークから急落したのだ。

 このように2006年初のグローバルなクウォドルプル高はファンダメンタルズ相場であり、素直に喜んでよい事であるとは思うが、心配なことが一つある。それは日本だ。中央銀行の独立性が圧殺されている日本が果してファンダメンタルズ相場について行けるのか?日銀が量的緩和を終結させられないでいる間に大手不動産株は市場によって調整されてしまったのだ。日銀は不要だ、と市場が考え始めたのである。これは日銀というよりも昨年のブログ「小泉首相も抵抗勢力」などで何回も指摘した通り政府・与党の責任である。昨年来再三繰り返しているが、2006年の円ポートのキー・ポイントは長期債価格の急落(国債の投げ売り)だろう。そうなると日本がグローバルなクウォドルプル高の循環を破壊する引金となる可能性が出てくる。「日本売り」を警戒しつつクウォドルプル高の今後の展開を注視することとしよう。

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