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2005年9月 1日 (木)

EU統合の行方(その2)

(その1から続く)

欧州統合の行方を「欧州の求心力と遠心力の重層的なバランス」という観点から見直してみよう、というのが今回のシリーズ全体の趣旨だ。そこでまず第2回目の今回から数回にわたり、フランス・アルザス地方の歴史を手掛りとして、欧州統合実現のキーポイントとされるドイツとフランスの戦後の協調関係(求心力)が、実は長年の対立・抗争(遠心力)の果てに実現されたものだということ、またそうした過程にはキリスト教の歴史が遠心力として重層的に絡み合っていたことを解説して行く。

アルザスはフランスの東端に位置し、西はボージュ山脈、東はライン川(ドイツ国境)に挟まれた平野である。ローマ帝国領であった時代に葡萄の栽培が始まり、現在では辛口の白ワインとして世界的に知られるリ-スリングの産地だ。葡萄やトウモロコシなどの畑がゆるやかな丘にゆったりと広がる景色は富良野・美瑛を思い出させる。美しい田園風景の間を縫って個人経営の小さなワイナリーが数多く点在する村々を結んで行く片側1車線の道はワイン街道と呼ばれ、ちょうどモントリオールからニューヨークに向って、メイン・バーモント・ニュ-ハンプシャー・マサチューセッツ・コネチカットと、時間の止まったような田園地帯の村々を縫いながら車で南下してゆくルートにそっくりだ。アルザスの西、ボージュ山脈を越えたところには石炭・鉄鋼石の産地で重工業の中心地でもあるロレーヌと、シャンパンで知られるシャンパーニュが位置している。このようにアルザスはライン川の物流と農業・工業地帯を結ぶ交通の要衝であることから、長年にわたってドイツ・フランス間の領土権をめぐる衝突の中心となってきた。EU本部はベルギーのブリュッセルに、欧州中央銀行(ECB)はドイツのフランクフルトに設置されているが、欧州議会がアルザスの中心都市であるストラスブールに置かれたのは、過去遠心力に振り回されてきたこの地こそ欧州統合の求心力の新たなシンボルとして相応しいとのEUの想いの表れなのだ。欧州議会のビルはストラスブール市の北部に位置し、マニラのアジア開発銀行(ADB)を遥かに凌ぐ、巨城のような威容を誇っている。

それでは、今やEUの求心力の象徴となったアルザスは過去どのような遠心力に弄ばれてきたのか。そしてそれはキリスト教の展開とどのように重なり合っていたのか。これが次回のテーマである。 (その3に続く)

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