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2005年9月11日 (日)

英国国債(ギルツ)のイールドカーブに注目!

日米ともイールドカーブのフラット化が止まったようだ。これからはどうなるのか。それを考える上で、英ポンドのイールドカーブが参考になる。

9月10日付Bloomberg配信記事によると、メリルリンチが8日付のリポートで米2年債の売りと10年債の買いを推奨したとの事だ。2年債と10年債の利回り格差は先週初めに12bpまで縮小したあと、ハリケーン・カトリーナの後遺症から米国の利上げが中断されるとの見方が広がって短期債の利回りが下落した結果、現在は約26bpまで拡大しているが、メリルリンチはいずれ米国の利上げが再開されるためイールドカーブが再度フラット化する、と見ているようだ。このメリルのシナリオのポイントは、それが暗黙のうちに「米ドルのイールドカーブの形状は短期金利に依存して決まり、政策金利の上げ下げは長期金利には影響しない」という事を前提にしているところだ。この考え方は正しいだろうか。

8月3日付のブログに書いた通り、イールドカーブの形状変化には債券価格主導パターン(長期債利回りが短期債へ波及)と短期金利主導パターン(短期政策金利の変化が長期債に波及)とがあり、今回見られたフラット化の本質は前者のパターン、つまりEquityと裁定関係にある長期債の需給が変化し、世界中でFixed IncomeからEquityに資金がシフトした結果、長期から短期債へと金利の上昇が波及したものであった。さらにその後原油価格の高騰が経済に対してインフレ的ではなくデフレ的に作用するというコンセンサスが確認され、長期債が買い戻されて中・短期債からEquityに資金が更にシフトした結果、イールドカーブのフラット化が一段と進んだのである。この過程でたしかにハリケーン・カトリーナの後遺症から米国の利上げ中断との見方が一時的にイールドカーブの形状に影響した事実はある。従ってメリルのシナリオは間違いではないが、短期政策金利の影響力を過大視すると危い。株価が更に上昇すれば長期債価格が下落(=長期金利が上昇)し、イールドカーブが立ってしまうからだ。大切なポイントは、今や長期金利はEquityと裁定関係にある長期債の需給から決まっており、ある意味でEquityの関数となっていることだ。

債券の残存期間が長ければ長いほど、期日まで持ち切るつもりで買う投資家は少なくなる。つまり長期債の利回りは長期資金運用・調達の基準というよりも、単にEquityと裁定関係にある長期債価格の逆数にすぎないとも言えるのだ。長期債価格は短期政策金利の上がり下がりから独立した独自の需給要因で決まる面がますます強くなっており、例えば中・長期国債は残存期間ごと・回号ごとの需給からそれぞれ価格=利回りが決まっていると言っても過言ではない。短期金利と長期金利は別々の需給要因で動いており、イールドカーブの形状はその結果にすぎないと考えるべきだ。だから政策金利を上げても長期金利が上がらないのは別に「謎」(グリーンスパン)ではない。

こうした金利の期間構造がはっきりと表れているのが英ポンドのイ-ルドカーブだ。英ポンドのイ-ルドカーブは、√(ルート)の上辺が右に伸びて緩やかに下降して行く形状となって久しい。債券価格の世界と短期金利の世界が分離されて別々の需給で動く、金利の二重相場制だ。米国が今回のイールドカーブのフラット化からこの段階に入ったと言える。円の金利体系も、まだあちこちに残っている「四畳半」と言われた護送船団時代以来の規制金利体系の残滓をようやく抜け出しそうだ。短期金利体系は政策金利を中心に形成され、長期金利体系はEquityとの裁定関係で決まる長期債価格によって、短期金利からかなりの程度独立して形成される時代が間もなくやってくる。その時日本は財政をどうするのか。まだ誰もそのシナリオを描いてはいないが、8月22日のブログ「改憲とわが国の経済(その2)」で指摘した国家債務の実質的Equity化が大きなヒントになるのではないかと考えている。

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