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2005年7月 5日 (火)

国債は本当に危険な商品か

昨日(7月4日)のゼミでの、3年次生S嬢と私のQ&Aです。

Q:国民一人当りの借金が6百万円だって!先生、これじゃ日本の国債なんか危なくてとても買えないですよね。

A:確かに国の借金を日本の人口で割るとそうなるが、国の借金を個人の借金と同列視するのは問題があるね。

Q:でも財政赤字がどうにもならないほど大きいのはホントですよね。国債の借金は返せるんですか?

A:返せる。なぜなら政府はいくらでも円を作ることができるのだから、期日が来た国債は必ず償還されるよ。

Q:だけどロシアやアルゼンチンの政府は、国債が払えなくなって大変なことになったんじゃないんですか。

A:いいポイントだね。ロシアやアルゼンチンはドルや円で国債を発行していたんだ。自国の通貨ならいくらでも作れるが、他国の通貨で国債を出してしまったら、勝手に他国の通貨を作るわけにはいかないので、外貨準備が乏しくなれば国債が返せなくなる。ロシアやアルゼンチンはこのケースだったのさ。

Q:そうか。でもなぜロシアやアルゼンチンは外貨で国債を出したんですか?

A:国内のお金(貯畜)が少ないために、外国の投資家に国債を買ってもらう必要があったからなんだ。だからドルや円で国債を発行したんだよ。

Q:日本はどうなんですか?

A:日本の国債は円だけ。しかも幸か不幸か、国内で95%以上保有されていて外国の投資家は5%も持っていないんだ。

Q:それは日本の国内に十分お金があるから外国に国債を買ってもらわないで済んでいる、ていうこと?

A:その通り。日本の家計部門の貯畜はいくらあるか知ってる?

Q:えーっとGDPの3倍って習ったから、1500兆ぐらい?

A:そうだね。そうすると国民一人当りいくら貯畜があることになる?

Q:……千二百万円ぐらいかなあ。

A:そうだね。借金のニ倍も貯畜があるわけだ。だから外国に国債を買ってもらわないで済んでいるのさ。

Q:そうか。でも、政府は国債を全部返せるのは確かだとしても、いつまでも財政赤字が続くと、政府が信用されなくなって国債も値下がりする心配はないんですか?

A:今日は粘るね。そこは実はSさんの言う通りなんだ。つまり国債は期日に必ず支払ってもらえるけれど、その時に物価が二倍に上っていたら、同じお金で買えるモノの量は半分になってしまう。円の購買力、つまり国債の実質的な価値が減ってしまうわけだ。でもこれは銀行に預金しても同じ事。インフレが起きると、元本保証の投資商品でも実質的な価値は減ってしまうんだ。むしろ元本の保証がなくても、経済成長やインフレにフォローして価値が上がって行く商品のほうが長期的に見ると安全とも言えるよ。

Q:株のことですか?

A:そう。でも株だけじゃなくて、国債でも金利がインフレ率にスライドしたり、変動利付債といって、市場金利のアップダウンに応じて利子が変って行く、インフレ対応型のタイプも開発されているよ。

Q:個人向け国債ってそれですか?

A:よく気がついたな。個人向け国債も基本的には変動利付債だよ。金利に最低保証がついていて、その分中途解約のペナルティーがある。授業で説明したオプションの考え方が組み込まれているんだ。

Q:はぁ……オプションはよくわからなかったけど、国債のことは何となくわかりました。それと、インフレが進むと国債の価値が減ってしまうんですよね。そうすると国債を買った人は損するけど、だれか得する人はいるんですか?

A:いい質問だね。誰が得するのか、調べて来週発表してください。ヒントは国際金融論の授業で説明した「シニョレッジ」という概念だよ。

Q:わかりました。どうも有難うございました!

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次回は、国債投資の経済効果をシミュレーションしてください。
現在、毎年の国債費はいくらか。税収はいくらか。
過剰な国債費がなくなったら、どの程度の減税が可能であるのか。
減税により、実質的に投資効果はどうなるのか。

投稿: 大豆 | 2005年7月 5日 (火) 18時10分

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