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2005年7月30日 (土)

ハリー・ポッター7の展開予想(番外編です)

【ハリポタ6を未読了の方は読めないようにスペルがかかっています。もし読めてしまったら、あなたはhalf-bloodかも・・・・・・】

ハリー・ポッター第6巻には多くの不可解な謎がある。第7巻ではどんなドンデン返しが用意されているのだろうか・・・・・昨日のブログで指摘した疑問点から第7巻の展開を次のように推測してみた。

ロケットにはやはりダーク・ロードの分魂が仕込まれていたのだ。そしてその分魂は、それを覆っていた液体を飲み干した者に移転し、液体を飲んだ者がダーク・ロードの分身になる仕組みになっていた。ダンブルドアはそれを知っていて、自らがダーク・ロードの分身となって殺されることにより、自分の命と引き換えにダーク・ロードの分魂を消滅させることを計画し、成功したのではないか。スネイプはもちろんこのシナリオを事前にダンブルドアから聞かされていて、ダーク・ロードの分身と化したダンブルドアを殺せる魔力を持つのはスネイプしかいないため、最後はダンブルドアを殺すことを承諾していた。こう考えるとなぜダンブルドアがスネイプを最後まで信頼し、瀕死でホグワーツに戻るやいなや直ちにスネイプを呼びにやらせたのか、説明がつく。ダンブルドアの最後の言葉は

"Severus...please"

であった。これは命乞いではなく「さあ、頼んだ通り私を殺してくれ」という意味ではないか。そうすればスネイプがハリーの命を二回も救った上に、ハリーから臆病者呼ばわりされて烈火のごとく怒ったのも辻褄が合う(昨日のブログ参照)。一方ダーク・ロードはスネイプを忠実なスパイと思いこんで指示を出しているから、スネイプはドラコがダンブルドア殺害の密命を帯びていることを当然知っており、またダーク・ロードの分身となるダンブルドアを自分が殺さなければならないことも既に分かっていたからこそ、ドラコをサポートするという不破の誓いを立てたのだ。ロケットの中に残されていたメモがまだうまく説明できないが、内容から見ておそらくダンブルドア自身が書いて入れたのではないか。

ここまで書いてきて気がついたが、いま目の前にある材料をもとに第7巻の展開を予想するのは、このブログの本来の趣旨である中長期的ポートフォリオ・マネジメントとそっくりだ。仕込んだポートがどんなパフォーマンスを見せるか、ますます第7巻が楽しみになってきた。

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2005年7月29日 (金)

ハリー・ポッター第6巻の疑問点(番外編です)

【ハリポタ6を未読了の方は読めないようにスペルがかけてあります。もし読めてしまったら、あなたはhalf-bloodかも・・・・・・】

(1)序盤でのドラコ・マルフォイとスネイプのダークな振舞いがあまりにもストレートに結末に結びついていて、何の謎もない。こんなシンプルなストーリー構成は過去5巻にはなく、不気味。何かありそうだ。

(2)第6巻のタイトルであるThe Half-

Blood Prince の正体の謎解きがあまりに単純で、ストーリーの展開と絡み合っていない。これも過去5巻にはないパターンで、謎解きがまだ完結していない感じが残る。

(3)ダンブルドアがスネイプを信頼していた理由の説明が単純すぎる。これでは彼は単なるお人良しで、とても百戦練磨のウィザードとは思えず、何か裏がありそう。

(4)ダーク・ロードの究極の目的がハリーを殺すことだとすると、なぜ回り道ばかりしているのか。スネイプには6年間いくらでもチャンスがあった筈だ。

(5)ハリーは戦いの最中に「ポッターはダーク・ロードの配下だ。手を出すな」というスネイプの声に命拾いをする。また、ハリーがスネイプと対決した時の会話は

「彼を殺したように、さあ、僕を殺せ、臆病者」

「私を、臆病者と呼ぶな!」

であり、スネイプは飛び去る。ハリーは二回スネイプに命を助けられているのだ。

等々、今回ほど多くの疑問点を残した巻はない。第7巻にはとんでもないドンデン返しが用意されているのではないか?このままでは私のブログネームやメアドを変えなければならなくなるので、そうならないように期待をこめて第7巻を待つことにします。

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2005年7月23日 (土)

人民元の通貨バスケット制とは?

具体的な仕組みについて説明します。

これまでの人民元はドルに連動していましたが、発表によると今後は「通貨バスケット」に連動します。「通貨バスケット」とは、ピクニックのランチ・ボックスのようにいろいろな種類の食べ物(=通貨)が少しづつ入っている箱のようなものと考えてください。いままでは人民元の価値を表すバスケットにはドルという「おにぎり」しか入っていなかったのですが、これからは円やユーロなど、いろいろな「おかず」も入れることにしたわけです。有名な通貨バスケットの例としてはIMFが使用しているSDRや、現在のユーロの前身であったECU(エキュ)などがあります。

さて、今回の人民元のバスケットのナカミ(通貨の種類と構成比率)は中国が主要な貿易相手国ごとの貿易比率などを考えて決めたと言われていますが、公表はされていません。また中国はそのナカミを今後も自由に変更する可能性があるので、将来のバスケットの価値に継続性があるのかどうか、まだわかっていません。こうした前提条件付きで「通貨バスケット」の具体的な仕組みを以下に例示します。

新しい人民元の価値が、報道されているように1ドル=8.11元でスタートしたとします。計算をわかりやすくするためにこの逆数をとり、この人民元相場を100元=12.33ドルと表示します。また、今後人民元はドルに対して50%、円に対して30%、ユーロに対して20%の割合で連動することになったとします。さらに今の為替相場が1ドル=111円、1ユーロ=1.2ドルであるとします。この前提で新しい人民元の価値を計算してみましょう。

上の前提で計算すると、100人民元の価値は

12.33ドルの50%(=6.165ドル)
プラス
12.33ドルの30%(=3.699ドル)相当の円
プラス
12.33ドルの20%(=2.466ドル)相当のユーロ

ということになります。これを上記の円・ユーロの対ドル為替相場を使って書きかえると、100人民元の価値は

6.165ドル
プラス
410.59円(3.699ドルX111円)
プラス
2.055ユーロ(2.466ドル÷1.2ドル)

になります。この式が新しい人民元のバスケットです。つまり中国は100人民元の価値を

「6.165ドル+410.59円+2.055ユーロ」

であると決めた、ということを意味しています。そしてこれ以後、人民元の為替相場は円とユーロの対ドル為替相場の変動に応じて変動して行くことになります。(従ってバスケットに入っている通貨の比率も最初の比率から徐々に変化して行きます。)

例えば今仮にドル/円相場が1ドル=120円に変化したとします。(1ユーロ=1.2ドルは不変とします。)

そうすると100人民元の価値は

6.165ドル
プラス
3.422ドル(410.59円÷120)
プラス
2.466ドル(2.055ユーロX1.2)

となります。合計すると

100人民元=12.053ドル、逆数表示では

1ドル=8.297人民元

に変化したことになります。円がドルに対して下落したことを反映して人民元相場も下落したことがわかります。

今回の人民元バスケットの実際のナカミ(通貨の種類と構成比率)は公表されていませんが、中国の主要貿易相手国の比率を想定し、それらの通貨の対ドル・レートの変化を計算して、人民元の対ドル・レートの変動をコンピューターを使って1ヶ月程度シミュレーションしてみれば、人民元バスケットのナカミをかなり正確に推定することができます。ゼミ生の諸君は夏休みの研究課題としてトライしてみてはどうですか。但し人民元が本当にバスケットになったのだ、ということが前提になります。シミュレーションの結果「この前提が崩れている」という論証ができれば、これはこれで大変面白い(ショッキングな)結論になりますね……!

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2005年7月21日 (木)

日米金利差とドル/円

7月20日(NY)のグリーンスパンFRB議長の議会証言に特に意外感はなく、TN(10年)は4.25%の支持線を突破できずに(金利が)反落した。日米長期金利差にトレンド的な変化が起きていないので、まだ果報を寝て待っていればよい事が確認できた。

ところで最近のマーケット・レポートに「日米金利差の拡大期待から円安・ドル高になった」という後講釈がしばしば見られ、ちょっと気になっている。「日米金利差拡大予想」とは「ドル債の価格下落と円債の価格上昇」を予想する事と同じ意味なので、そういう予想をする投資家はドル債を売って円債を買うはずだ。逆に、「日米金利差はもうこれ以上拡大しない」と予想する投資家であればドル債を買って円債を売るから、この場合であれば円安・ドル高の要因になりうるのだ。このようにプロのコメンテーターでも金利と債券価格の単純な逆数の関係を理解していない場合があるので気をつけよう。

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2005年7月15日 (金)

ジャンク債のスプレッドが急縮小!

昨日のNY(7月14日)で米株が続伸したが、ジャンク債のスプレッドも急縮小している。円投にも安心感があるため今日が最後のジャンク債の仕込み時だ。(来週月曜日は海の日の休日。)

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2005年7月14日 (木)

人民元の実験が始まる(その3)

(その2から続く) 人民元の切上げ(=変動幅の拡大)は資本取引における人民元の交換性の拡大を伴なうものではないこと、また資本取引通貨としてはますます香港ドルが重用され、経常取引通貨である人民元との機能分担(一国二通貨制)が一段と進むこと。この二点が前回までの分析の結論であった。それではこうした香港ドルの変化は我々外国投資家にとって何を意味するのだろうか。これが次なるテーマだ。この問題を考える手掛りは、「開放経済のトリレンマ」仮説に照らして中国の目指す一国二通貨制の帰結を考えて見ることにある。

開放経済のトリレンマ(Open-economy Trilemma) とは、「開放経済体制の下では(1)独自の金融政策 (2)自由な資本移動 (3)為替レートの安定 のうち二つしか達成できない」という仮説である。アジア通貨危機後の新しい国際通貨秩序のあり方が議論される中で提唱され、今なお多くの実証分析が行なわれている。このトリレンマを現実の各国の実際の通貨制度に当てはめてみると、(3)の「為替レートの安定」を放棄しているのが日本、米国、EUなどのフリーフロート国。(2)の「自由な資本移動」を放棄(制限)しているのがハード・ペグの中国、べトナムやソフト・ペグのインド、先発アセアン各国。そして(1)の「独自の金融政策」を放棄しているのがパナマや中南米(ドル化)、コソボ(ユーロ化)、そして香港(カレンシーボード)なのだ。

今中国が導入しようとしている一国二通貨制は、経常取引通貨としての人民元の変動幅拡大により「為替レートの安定」の一部を放棄する代わりに、現在放棄(制限)している「自由な資本移動」を香港ドルを通じて手に入れようとするものである。ただし「為替レートの安定」の一部を放棄するとは言え、人民元の使用はあくまでも経常取引に限られるから、その中国経済に与える影響は極めて限定的なものであり、「放棄」のコストは小さい。加えて「開放経済のトリレンマ」仮説が貫徹されるとすれば、限定的な「為替レートの安定」の放棄と引き換えに手に入れることが出来るのはせいぜい「制限された資本取引」の拡大にすぎない。中国が香港ドルを通じて実現しようとしているのは正にこれなのだ。、ある程度自由な資本移動は既に部分的に香港ドルによってカレンシー・ボード制の枠内で実現されているが、中国国営大企業の香港上場による民営化ラッシュがまだ始まったばかりであり、むしろこれから本格化することを考えると、中国が香港ドルによって手に入れようとしているのは、管理された大規模な資本流入なのだということがわかる。こうした大規模な資本移動は香港単体のカレンシー・ボードの制約の下では実現困難であり、カレンシー・ボードはいずれ廃止される運命にあると考えるべきだ。

カレンシー・ボードから解き放たれた香港ドルは、未だかつて世界に例を見ない通貨となる。巨大な国民経済に支えられながらも、その資本収支(しかも特に主として資本流入)だけを担うオフショア専用通貨となるのだ。もちろんこうした通貨システムは香港SAR自体の一国ニ制度が前提になっているため、中国が一国二通貨制のメリットを評価してそれを維持すようとする限り、香港SAR自体が中国に吸収される心配はない。むしろ現在のカレンシー・ボードの裏付けである香港政庁の外貨準備が、中国そのものの巨額の外貨準備に置換えられる形で、中国主導で香港ドルが運用される事になるのではないか。巨大な「管理された資本取引通貨」が史上はじめて誕生する。香港市場はおそらく今以上に「素人が下手に手を出すと怪我をする」という、「プロのクローニー」(その是非はさておき)の世界になる。かかる大規模な「管理された資本取引通貨」は果して持続可能なのであろうか。

人民元の変動幅拡大は、実は香港ドルの歴史的な実験の始まりなのだ。

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2005年7月12日 (火)

イールド・カーブのフラット化に備えよう

米ドルのイールド・カーブはフラットに近い形状になっているが、別に「謎」(グリーンスパン)というわけではなく、

★企業部門の貯畜拡大(モーガン・スタンレー調査)
★製造業の業績低下(ISM製造業景気指数が50に接近)
★経常収支赤字のリサイクル

等によって国債需要が旺盛だからである。

日本でも企業部門の貯畜が拡大しており、また一見好調な企業業績も外需頼み(日経調査によると上場企業の営業利益の海外拠点依存度が20%に迫った)である。経常収支以外は米国と似た環境にあるから、インフレ懸念が出て来るとイールド・カーブが期近から立ちあがり、全体としてはフラット化する。といっても我々個人投資家はスワップにアクセスできないので、中期ゾーンを今から売っておくことぐらいしかできない。ただイールド・カーブが水平化すれば個人向け国債の魅力が極端に薄れるので、個人のマネー.フローがかなり変化する可能性がある。国も個人もそろそろ個人向け国債に代わる受け皿を探しておく必要がありそうだ。

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2005年7月10日 (日)

今週のFT週末版より

今週のファイナンシャル・タイムズ週末版から気になる記事をピックアップしてみた。

(1)タイ・バーツ急落……アジアでエネルギー輸入(ネット)が最も多いタイが原油価格高騰の直撃を受け、経常収支が急速に悪化し、バーツが急落している。

(Snape注:1997年のアジア通貨危機がタイの経常収支悪化から始まった事が想起される。タイ以外のアジア各国も、日本を含めてエネルギーの輸入ポジションはさして変わらない。人民元切り上げ期待の剥げ落ちもあり、アジア通貨は当面反落が続きそうだ。)

(2)中国国内の「人民元ドル・ペグ離脱論」が力を失っている。中国の景気後退・デフレ懸念が強まったため。

(Snape注:景気循環の議論ではないと思う。来週このブログに掲載予定の「人民元の実験が始まる・その(3)」を参照してください。)

(3)Moody'sがGMの格付けをジャンクに。……従業員価格での販売台数の急増は一時しのぎで持続不可能との見方。GMは反発。

(Snapeコメント:これで格付けがS&Pと揃うことになる。トヨタの「思いやり値上げ」も格付機関には評価されなかったようだ。来週の社債スプレッドはフォードともども要注視。)

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2005年7月 8日 (金)

テロと戦争の経済学

7月7日、このブログでかねてから指摘してきた地政学的リスクがまた顕現してしまった。ただ今回のロンドン同時多発テロ直後の市場の反応は2001年のNYテロとはかなり異なる。2001年のNYのケースではドルが急落し、株は主要市場で軒並みサスペンド/ストップ安となった。今回は為替面ではポンドが多少売られただけで、ドルも瞬間的に売られたあとは戻り高だ。また、別の地政学的リスクを抱える円(後述)は続落となった。株はNYダウ・日経平均ともに個別銘柄への影響(兵器・建設業買、観光業売)にとどまり、FT100が1.4%下落しただけだ。もっともNYダウ・日経平均の現水準はいずれもほぼ一年前と同じなのにFT100だけが約20%上昇しているので、この程度の下落はポジション調整の範囲内と言える。このようにテロ直後の市場の反応は落ち着いたものだったが、果報を寝て待つ中長期的スパンでは別の見方が必要だ。

戦争当事国の経済には財政負担がのしかかり、停滞する。(朝鮮特需で潤った当時の日本は戦争当事国ではなかった。)一般公共事業に使われる財政支出は、その是非に多々議論があるものの、形のある社会資本(道路、ダム、空港など)が残り、雇用創出効果がある。ところが同じ財政支出でも、軍事費は在庫や設備の廃棄と同様、経済的にはトータル・ロスとして消えてなくなってしまうのだ。ベトナム戦争・東西冷戦はいずれも重い財政負担がアメリカ経済の構造的疲弊を招き、ベルリンの壁崩壊で冷戦が終焉したあとは世界中で解放された軍事費が資産バブルに向かった。ところが今世界は再び戦争の時代に向かいつつあるように見える。そのキーワードは二つ。「イスラム」と「中・ロ接近」だ。

イスラムについてはこのブログで頻繁に取り上げてきたので、過去ログをご参照願いたい。イスラムに関わる地政学的リスクには1300年の歴史的背景があり、NYテロ、アフガン、イラク、ウズベク問題、フランスの欧州憲法条約批准否決などはいずれもこれが顕現化したものだ。今回のロンドン・テロのように、これからもいかなる形でいつ顕現化するか予知できない、終わりの見えないリスクなのだ。中・ロ接近については先日の中・ロ首脳会談の記録を是非精読してみていただきたい。両国の急接近から冷戦時代の復活を示唆するメッセージが読み取れるはずだ。「イスラム」と「中・ロ接近」。この二つのキーワードは、1990年代に解放され、世界中にばら撒かれた軍事費に再び召集がかかった事を意味する。

この中で日本は更に独自の地政学的リスクを抱えている。一つは指摘するまでもなくアジア近隣諸国との政治的・軍事的緊張、もう一つは大地震災害の可能性の高まりである。財政負担は増えるばかりで赤字改善の見こみは全く立たず、エネルギー価格の上昇は今後ボディー・ブローのようにジワジワと利いてくる。また銀行の不良債権処理が終了したため、国債の利回りを低水準に固定して銀行のトレジャリー収益を支援する必要がなくなったことから、日銀が量的緩和終焉のサインを送るタイミングは近い。その時世界中の投資家のJGB(日本国債)売りは空前の規模となるだろう。ポートフォリオ戦略としては、JGBを早めに処分してとりあえず円キャッシュを厚くしておき、高格付のソブリン外債(これも質への逃避)を仕込む為替のタイミングを窺いたいところだ。

ということで来週JGBの売りオーダーを出します。

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2005年7月 5日 (火)

国債は本当に危険な商品か

昨日(7月4日)のゼミでの、3年次生S嬢と私のQ&Aです。

Q:国民一人当りの借金が6百万円だって!先生、これじゃ日本の国債なんか危なくてとても買えないですよね。

A:確かに国の借金を日本の人口で割るとそうなるが、国の借金を個人の借金と同列視するのは問題があるね。

Q:でも財政赤字がどうにもならないほど大きいのはホントですよね。国債の借金は返せるんですか?

A:返せる。なぜなら政府はいくらでも円を作ることができるのだから、期日が来た国債は必ず償還されるよ。

Q:だけどロシアやアルゼンチンの政府は、国債が払えなくなって大変なことになったんじゃないんですか。

A:いいポイントだね。ロシアやアルゼンチンはドルや円で国債を発行していたんだ。自国の通貨ならいくらでも作れるが、他国の通貨で国債を出してしまったら、勝手に他国の通貨を作るわけにはいかないので、外貨準備が乏しくなれば国債が返せなくなる。ロシアやアルゼンチンはこのケースだったのさ。

Q:そうか。でもなぜロシアやアルゼンチンは外貨で国債を出したんですか?

A:国内のお金(貯畜)が少ないために、外国の投資家に国債を買ってもらう必要があったからなんだ。だからドルや円で国債を発行したんだよ。

Q:日本はどうなんですか?

A:日本の国債は円だけ。しかも幸か不幸か、国内で95%以上保有されていて外国の投資家は5%も持っていないんだ。

Q:それは日本の国内に十分お金があるから外国に国債を買ってもらわないで済んでいる、ていうこと?

A:その通り。日本の家計部門の貯畜はいくらあるか知ってる?

Q:えーっとGDPの3倍って習ったから、1500兆ぐらい?

A:そうだね。そうすると国民一人当りいくら貯畜があることになる?

Q:……千二百万円ぐらいかなあ。

A:そうだね。借金のニ倍も貯畜があるわけだ。だから外国に国債を買ってもらわないで済んでいるのさ。

Q:そうか。でも、政府は国債を全部返せるのは確かだとしても、いつまでも財政赤字が続くと、政府が信用されなくなって国債も値下がりする心配はないんですか?

A:今日は粘るね。そこは実はSさんの言う通りなんだ。つまり国債は期日に必ず支払ってもらえるけれど、その時に物価が二倍に上っていたら、同じお金で買えるモノの量は半分になってしまう。円の購買力、つまり国債の実質的な価値が減ってしまうわけだ。でもこれは銀行に預金しても同じ事。インフレが起きると、元本保証の投資商品でも実質的な価値は減ってしまうんだ。むしろ元本の保証がなくても、経済成長やインフレにフォローして価値が上がって行く商品のほうが長期的に見ると安全とも言えるよ。

Q:株のことですか?

A:そう。でも株だけじゃなくて、国債でも金利がインフレ率にスライドしたり、変動利付債といって、市場金利のアップダウンに応じて利子が変って行く、インフレ対応型のタイプも開発されているよ。

Q:個人向け国債ってそれですか?

A:よく気がついたな。個人向け国債も基本的には変動利付債だよ。金利に最低保証がついていて、その分中途解約のペナルティーがある。授業で説明したオプションの考え方が組み込まれているんだ。

Q:はぁ……オプションはよくわからなかったけど、国債のことは何となくわかりました。それと、インフレが進むと国債の価値が減ってしまうんですよね。そうすると国債を買った人は損するけど、だれか得する人はいるんですか?

A:いい質問だね。誰が得するのか、調べて来週発表してください。ヒントは国際金融論の授業で説明した「シニョレッジ」という概念だよ。

Q:わかりました。どうも有難うございました!

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