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2005年6月 7日 (火)

EU統合へ英国はどう動く?

 英国はEU憲法条約批准の賛否を問う国民投票を2006年春に予定していたが、フランス・オランダの「NO」を受けて6月6日、国民投票実施に関する法案審議を棚上げとした。解説するまでもなく英国がEU憲法の今後の展開の鍵を握っているのだが、最も重要なポイントは英国がEU憲法条約を批准するのかどうかではなく、ユーロを採用するのかしないのかということである。EU憲法条約はEUの政治統合という「名」を象徴するにすぎないが、ユーロの採用はEUの経済統合という「実」に結びついているからだ。
 英国人にとって英国はヨーロッパではない。英国人は今でも「休暇を取ってヨーロッパヘ行く」という言い方をする。英国人にとってヨーロッパとは欧州大陸のことなのだ。余談になるが、日本人もよく「アジアと日本の経済交流」という言い方をする。無意識のうちに日本がアジアの中にあることを忘れているわけで、これがアジア各国が日本に対して抱いている違和感の背景にある。
 1952年にEUの前身である欧州石炭鉄鋼共同体を創設したのは欧州大陸の6か国だ。英国は1973年にデンマーク、アイルランドとともに加盟した。筆者はロンドンの南方に位置する学園都市ボーンマスで学生時代を過ごした経験があり、英国がEUに加盟した直後の1974年、学生時代に寄宿していた世界的な野生動物専門の写真家であるビセロット氏一家を久方ぶりに訪問する機会があった。その折に英国のEU加盟をどう思うか、フランスの農作物などの大陸産品が入ってきてどんな影響があるか、などと尋ねたのだが、寡黙なビセロット氏は笑って答えず、代りにマダムが「難しいことは私達にはわからないが、別にフランスの農作物を食べるようになったわけでもなく、暮しは何も変わっていないし、これからも変らないのではないか」とコメントしてくれた。たしかにその後英国と欧州大陸の関係に大きな変化はなく、英国は1999年にスタートした欧州通貨統合にも加わらなかった。
 英国が欧州大陸と距離を置くのはなぜか。長い歴史的・文化的な背景のほかに経済構造の違いがある。英国は高成長・高インフレ・高金利・低失業率。貿易収支は赤字。資源の輸出国、工業製品の輸入国である。ところが欧州大陸の中核各国は、これらすべてにおいて英国と逆(短期的な逆転はあっても)なのだ。英国は経済構造が欧州大陸と正反対である為に、国家主権を一部犠牲にしてまで伝統のスターリングを廃貨し、ユーロを導入するメリットを未だに自国民に明示できないでいるのだ。
 EUの政治統合という「名」はさておき、「実」である経済統合推進の鍵を握る英国のユーロ採用のメドが立たないとすると、ユーロから逃げ出している資金はどこへ逃げ込むのか。投資家の立場から見るとファンダメンタルズが悪すぎるアメリカと地政学的リスクが高まった日本には受け皿としての限界がある。そうなると今後しばらくはセーフ・ヘブンとして英ポンド、及びEU非加盟のスイスフランから目を離せなくなるのではなかろうか。

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