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2005年5月26日 (木)

人民元の実験が始まる(その1)

 中国が今やろうとしているのは単なる通貨の切り上げでもなければ変動幅の拡大でもない。ブレトンウッズ体制の崩壊やユーロの創設と並ぶ、国際通貨制度上画期的な実験なのだ。キーワードは「1国2制度」ならぬ「1国2通貨」である。

 先週、中国周辺国は人民元の変動幅拡大に備えて着々と手を打った。韓国が為替介入を放棄してウォン上昇を放置する方針に転換し、香港が香港ドルの対ドル変動幅拡大を発表したのだ。中国自身も直接投資の衣を被って入りこもうとする短期資本に対する規制や為銀のオフショア借入に対する上限規制を導入済みで、人民元の対外資本取引からの遮断が一段と強化された。XーDayに向けたカウント・ダウンがもう始まったと言ってよい。

 ところが、外国資本がこのチャンスに乗じて人民元をロングにして儲けようとしても、上述の通り人民元はますます対外資本取引から遮断されてきており、国外の投資家が本格的に人民元をロングにする手段は極めて限らているのが実情だ。例えば中国株式を対象とする投信も人民元建である上海A株へのアクセスは極めて限られており、ドル建ての上海B株と香港ドル建てのレッドチップスがポートフォリオの中心なのだ。中国はこれまで人民元を資本取引から徹底的に遮断してきたからこそアジア通貨危機の影響を免れ得たのだが、今回の人民元の変動幅拡大に際しても、その対象を実需取引(経常取引プラス限定された直接投資)に限定しようとしているのだ。言い換えれば、中国は「経常取引は人民元、資本取引は香港ドル」という「1国2通貨」制度を導入することにより、これまで度々通貨危機に見舞われてきた数多くの開発途上国が理想としつつも実現できなかった「経常取引と資本取引の分離」を実現しようとしているのだ。こうした経常取引と資本取引を遮断して別々の為替相場を適用する二重為替相場制は過去にベルギーが採用した例があるが、大きな経済力を有する国としては初めてであり、今後の開発途上国の通貨制度にとって新たなモデルとなる可能性のある重要な実験であると言えよう。

 それではなぜ「経常取引と資本取引の分離」が必要なのか。そしてうまく行くのだろうか。この点を考えてゆくためには、理論面から「開放経済のトリレンマ」の検討、制度面から香港が採用している「カレンシーボード制」の評価、また現実の経済実態の面からアジア通貨危機に際してのアジア各国の経験と教訓の再吟味などが必要である。(以下「人民元の実験が始まる・その2」に続く)

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