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2005年5月27日 (金)

人民元の実験が始まる(その2)

(「その1」から続く)

 中国が目指す「1国2通貨」制度は「経常取引は人民元、資本取引は香港ドル」というイイトコ取りの二重為替相場システムであり、既に機能しはじめている。具体的に見てみよう。

 主要なアジア通貨の外国為替市場における取引高(BIS統計、2004年4月基準、年間換算)がそれぞれの年間貿易額(輸出入合計、IMF統計)の何倍あるのかを見ると、第1位は円の116倍。この倍率が高いほど通貨の実需からの解放度が高いと見られるため、アジア通貨の中で円がトップであることは当然であるが、2位は何とカレンシー・ボードを採用して米ドルにペグしている香港ドル(19倍)である。次いでシンガポール・ドルと韓国ウォンが15倍前後で続くが、二桁はここまで。これに主要アセアン通貨が一桁台で続き、人民元は9通貨中最下位の0.6倍である。(三井住友銀行「マンスリー・レビュー」2005年5月号、13ページ)人民元が経常取引通貨として見事に資本取引から遮断されていることがわかる。さらに中国が香港ドルを資本取引専用通貨として積極的に位置付けようとしていることは、神華集団・中国交通銀行・中国建設銀行などの大物が次々と香港証券取引所に上場されるスケジュールであることからも裏付けられる。そしてここから「来るべき人民元の変動幅の拡大は人民元の交換性の大幅な拡大を伴わないが、香港ドルの性格が一変する可能性がある」というメッセージが見えてくる。そうなれば人民元の変動幅拡大の影響は極めて限定的な範囲にとどまることになり、我々海外投資家にとっては「中国は香港ドルをどうするつもりなのか」の見極めがより重要な問題ということになる。

 香港ドルはカレンシー・ボード制の通貨である。簡単に言うと金本位制における金準備をドルに置き換えた制度だ。中国がいずれ香港ドルをカレンシー・ボード制から解き放つつもりだとすると、我々はどんなチャイナ・ポートフォリオを作るのがよいのだろうか。「その3」ではこの点をじっくり考えてみたい。(「人民元の実験が始まる・その3」へ続く)

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2005年5月26日 (木)

人民元の実験が始まる(その1)

 中国が今やろうとしているのは単なる通貨の切り上げでもなければ変動幅の拡大でもない。ブレトンウッズ体制の崩壊やユーロの創設と並ぶ、国際通貨制度上画期的な実験なのだ。キーワードは「1国2制度」ならぬ「1国2通貨」である。

 先週、中国周辺国は人民元の変動幅拡大に備えて着々と手を打った。韓国が為替介入を放棄してウォン上昇を放置する方針に転換し、香港が香港ドルの対ドル変動幅拡大を発表したのだ。中国自身も直接投資の衣を被って入りこもうとする短期資本に対する規制や為銀のオフショア借入に対する上限規制を導入済みで、人民元の対外資本取引からの遮断が一段と強化された。XーDayに向けたカウント・ダウンがもう始まったと言ってよい。

 ところが、外国資本がこのチャンスに乗じて人民元をロングにして儲けようとしても、上述の通り人民元はますます対外資本取引から遮断されてきており、国外の投資家が本格的に人民元をロングにする手段は極めて限らているのが実情だ。例えば中国株式を対象とする投信も人民元建である上海A株へのアクセスは極めて限られており、ドル建ての上海B株と香港ドル建てのレッドチップスがポートフォリオの中心なのだ。中国はこれまで人民元を資本取引から徹底的に遮断してきたからこそアジア通貨危機の影響を免れ得たのだが、今回の人民元の変動幅拡大に際しても、その対象を実需取引(経常取引プラス限定された直接投資)に限定しようとしているのだ。言い換えれば、中国は「経常取引は人民元、資本取引は香港ドル」という「1国2通貨」制度を導入することにより、これまで度々通貨危機に見舞われてきた数多くの開発途上国が理想としつつも実現できなかった「経常取引と資本取引の分離」を実現しようとしているのだ。こうした経常取引と資本取引を遮断して別々の為替相場を適用する二重為替相場制は過去にベルギーが採用した例があるが、大きな経済力を有する国としては初めてであり、今後の開発途上国の通貨制度にとって新たなモデルとなる可能性のある重要な実験であると言えよう。

 それではなぜ「経常取引と資本取引の分離」が必要なのか。そしてうまく行くのだろうか。この点を考えてゆくためには、理論面から「開放経済のトリレンマ」の検討、制度面から香港が採用している「カレンシーボード制」の評価、また現実の経済実態の面からアジア通貨危機に際してのアジア各国の経験と教訓の再吟味などが必要である。(以下「人民元の実験が始まる・その2」に続く)

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2005年5月24日 (火)

ドル金利急落!

昨日(5月23日)週明けのニューヨークで米国10年国債の利回りが 4.06%(前週末比 -0.06%)まで急落し、カナダ10年国債(4.09%、同 -0.01%) との逆転現象が久しぶりに解消された。

理由は三つ考えられる。

(1)原油先物価格が落着いたこと。四月はじめに58ドル台まで上昇したが、このところ50ドル前後で落着いている為、インフレ懸念が後退した。

(2)海外需給。米国の経常収支は赤字が拡大しており、黒字国からの資本流入が増加している。またユーロはまだまだ対ドル高値圏にあり、値ごろ感からドルへのスイッチを進めやすい。

(3)米国内需給。GM・フォードの格付低下を契機として、債券市場で「質への逃避」が起きている。

ではドル金利の下落は今後も持続するのか。現時点での私の判断は「NO」だ。

(1)原油価格はたしかに落着いてはいるものの、まだ50ドル前後の水準だ。中国の高度成長や中東の供給不安といった原油価格を下支えしている中長期的要因に変化はなく、原油価格が現水準から大幅に下落するとは考えにくい。

(2)海外需給は良好だが、今後も増加する軍事費が財政を圧迫し続ける構造に変化はなく、米国国債の需給が本格的に改善されることは期待しにくい。

(3)GM・フォードの格下げによる「質への逃避」が起きているものの、格付機関によって評価に差がある上に、フォードについては社債の価格が持ち直し、投資適格債並みのスプレッドを回復している。格付機関の判断と市場の判断がズレたわけで、「質への逃避」がトレンドとして定着するかは疑問。

よって米ドル債は一たん利食い時と見る。

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2005年5月22日 (日)

デイ・トレードはなぜロスばかり?

理由は三つあります。

(1)情報の非対称性。株価もマグロやキャベツの値段と同様需要と供給のバランスで決まりますが、株の需給を支配しているのは内外のプロの機関投資家であり、情報収集力と分析力において個人投資家はとても太刀打ちできません。個人のアクションはどうしても後追いとなり、株の古い格言「‘まだ’は‘もう’、‘もう’は‘まだ’なり」の通りの結果になりやすいのです。

(2)ショートに制約があること。個人投資家の場合はどうしてもショート(売り)に制約があります。相場は上がるか下がるかしかないのに、ショートに制約があれば買いから入るほかなく、最初から片肺飛行を強いられてしまいます。

(3)レンジ・トレードの限界。デイ・トレードや短期売買では下がったところで買う/上がったら売る、という、値ごろ感からのレンジ・トレーディングが中心になります。これだと株価が一定の変動幅の中で安定している時には多少の日銭を稼ぐことができますが、株価が新しいレンジに移行する時は値ごろ感で仕込んだポジションが必ず外れになってしまうので、それまでに稼いだ日銭を全部吐き出すことになりやすいのです。加えて個人の場合は利喰いが早く損切りが遅い傾向がありますので、気がつくと手許に残っているのは持ち値割れの銘柄ばかり、ということになりかねません。

こう考えてくると、やはり中長期のポートをじっくり作るか、手数料は高くても気に入った投信を選ぶほうが精神衛生上もよいのではないかと思います。(ショートを積極的にやります、という投信もありますよ。)

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2005年5月20日 (金)

果報は寝て待て

 座右の銘を聞かれてこう答えると呆れた顔をされるが、これこそポートフォリオ・マネジメントの極意だと思っている。

 為替にしろ株にしろ、ただでさえ本来の仕事で忙しい中、さらに神経をすり減らしてまじめに相場をフォローしたあげく悔しい思いをするのはごめんだ。それよりも2ー3年以上のスパンでポートフォリオを作り、マクロ・トレンドが変わると感じた時だけメインテナンスすることにしておけば、何もしないで寝ているだけで、あるいは専ら本業に精を出しているうちに、ひとりでに資産がどんどん増えてくれる。

 そうなるとマクロ・トレンドの変化を感じ取ることが大切になるが、1日5分もあれば十分チェックできる。体調に変化を感じてかかりつけのホーム・ドクターに診てもらうとまず体温、血圧、脈拍をチェックしてくれるように、マーケット・チェックも定番の基本的な計数をいくつかウォッチしておけば重要なトレンドの変化を予知しやすくなる。為替では円/ドルとドル/ユーロ、金利は日・米・独のベンチマーク、株は東証とNY、あとは原油先物。今デイリーにウォッチするのはこれだけで十分だ。これらの計数の相互関係(正・負の相関)に大きな変化があれば、マクロ・トレンドに変化が起こる予兆かもしれず、世界中の機関投資家のポートが動き出す可能性がある。その時は1日5分では済まないので、ホームドクターに専門医を紹介してもらって精密検査を受けるのと同じように少し時間をかけて市場の材料をいろいろ分析することになるが、そこで一度ポートを組替えておけばまた「果報を寝て待つ」という生活に戻ることができる。

 ネットを使わず、わざわざ証券会社に高い手数料を払ってディ-ルをするのは、いざという時に専門医を紹介してくれるホーム・ドクターの機能を証券会社の担当者に期待しているからだ。この機能をしっかり果してくれるなら手数料は高くない、と思う。

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2005年5月19日 (木)

ちょっと、どこ見てんのよ!

見習いファンド・マネージャー(あなたのことかもしれませんよ)が青木さやかに似た上司にこう突っ込まれたら、「ハイ、今は日米長期金利差を見ています」と答えれば誉めてもらえる。

わが国の国債と米国T/Nの金利差(10年もの)が3%を大きく割り込んでいる。米国の長期金利は4%割れ直前、ブンズの利回りも史上最低圏にある。ところが日銀は好調なGDPを見て「量的緩和フェードアウト」のシグナルを送り始めた。内外金利差はさらに縮む。3年程度のスパンで見たポートフォリオの中規模な組換えを考えるタイミングが近付いている。

ポイントは二つある。一つはドルやユーロのFixed Incomeに逃げていた本邦機関投資家の資金の逆流。円の受け皿さえあれば外債はプライス・為替ともに利食い売りの好機である。いま一つはその受け皿だ。円の低金利を前提としたプロダクトは売られ、円のポートの中でも組換えが起る。典型的な例がJ-Reitだ。借入比率の高い銘柄は売られ、低い銘柄は量的緩和のフェードアウト⇒インフレ期待に素直に乗って買われる。二極分化が起る。こうした銘柄入れ替えのプロポーザルを見せられたら、動意を示す個人投資家は多いのではないだろうか。

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2005年5月17日 (火)

「人民元危機」は来るのか

中国が資本流入規制(為銀のオフショア借入上限規制)を導入した。想起されるのは1994年初にタイが実施した短期資本流入規制だ。タイに大量の短資が流入し、バーツ買いが止まるところを知らず、反動を警戒したタイ政府が実施した混乱予防策であったが、結果は周知の通り1997年央、激しいバーツの反動売りが発生し、アジア通貨危機の引き金となった。今回中国は通貨危機を経ずに人民元の変動幅拡大を実現できるのだろうか。

個人的な結論は「人民元危機は来ない」。アジア通貨危機の影響が軽微であった中国だが、その後経済のマクロコントロールが格段に強化されたところを見ると危機に見舞われた国々の教訓をしっかり身につけたようだ。加えて人民元に対する投機の手段が限られており、中国株は底値圏に沈んだままだ。アジア通貨危機の一要因であった資産バブルが今の中国には見られない。実需原則にこだわり、頑なに資本取引を遮断して来た成果ではないだろうか。その意味で、円滑な人民元の変動幅拡大が実現すればアジアにおける通貨制度の重要なモデルとなる。アジア通貨の対円ペグなどという日本の身勝手な期待も自然消滅しよう。それどころか、既に円は人民元の変動幅拡大期待で買われており、円の対人民元ペグという新しい時代の幕が開いたのかも知れないのだ。長期保有前提で中国株投信を仕込むタイミングが近づいているように思われる。

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2005年5月15日 (日)

ウズベクとユーロ

地政学的に見て米国以上にEUが重い荷物を背負うことになりそうだ。世界中で積み上がり切った膨大なユーロ・ロングが取り崩されると「震度」が大きくなる。政治テーマだけに読みにくい面が気ががりなので、円投のユーロ・ロングは一部現135円台でいったん利喰い、キャッシュを厚くして様子を見たい。人気の毎月配分タイプの高格付ソブリン債投信も、ユーロの比率が高い銘柄は要注意。一旦売って下値で買い場をさがしてもよいかもしれない。(Snape自身はユーロの利喰い売りがちょっと早すぎたようです・・・・・・。)

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2005年5月14日 (土)

ドル金利の下落

先週の米国の利上げにいかに意外感がなかったとは言え、ドルの長期金利が下げ止まらず、週末には10年物T/Nが4.2%を割り込んだ。デフレ警戒感がいかに根強いかということだろう。カナダ・ドルの長期金利との逆転現象がしつこく続いていることもあり、今後の金利反発局面はドル債買いのチャンスだ。今年前半のMy Deal of the Half Yearは残存9年弱のAAA格ドル債をYTM5%台で仕込んだこと。ゼミのOBであるO嬢がタイミングよく玉を出してくれた。超低クーポン債なので再運用金利がロック・インされているため今後ヒヤヒヤすることもあろうが、大きく利喰える局面がなくとも円投なので期日まで持ちきれば負けることはあるまいと踏んでいる。ところで最近足の長い物を仕込む時には、無意識のうちに自分の引退年齢を計算していることに気がついた・・・・・・。

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ドル上昇

人民元変動幅大幅拡大の思惑に引きずられた根拠のない円高が続いているうちにドル・ロングを増やしておこうと思っていたのだが、木曜日から金曜日にかけてあっという間に107円台に乗り、新幹線に乗ったり病人に付き添って病院に詰めたりしているうちにドルを買い損なってしまった。中国の反日デモが引金を引いた円の独歩安といい、その後の日中首脳会談での戻り独歩高といい、1年前から折に触れて注意喚起してきた円の構造的な地政学的リスク(北朝鮮の核、韓国・中国の日貨排斥、地震の頻発など)が絵に描いたように相場を動かすので、わが意を得たりとほくそえんでいたのだが、ここへ来ての107円台乗せは、対ユーロでは135円台の円高で、円安ではなくドル高だ。米国サイドには単なる企業業績などの循環的要因のほかには特段の好材料が見当たらないので、この動きはいまひとつわかりにくい。原油先物が下がっていることが背景にあるのだろうが、いずれにせよ一過性ではないか。だとすると円/ユーロを横目で睨みつつ円投でのドルの買い場を探すのがまだまだ正解のようだ。

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J-REITが好調

2004年の My Deal of the Year だったJ-REITが、一進一退のTOPIX・日経225を尻目に再び好調だ。昨年末あたりから景気減速警戒感が出る中で、外資系・私募ベースのJ-REITが飽和状態ではないか、とか、2005年の新規設定J-REITが10数本に達する、といった需給警戒感が出て、春先に大きく値を崩す場面があった。こうした状況にさほどの変化があったとは思えないのだが、ここへきてJ-REITの戻り高が目立つ。銘柄によってはゴールデン・クロスが出て高値更新を目指す勢いだ。日々の動きを見ると金融関連株とのトレード・オフで買われているようで、とりあえずの高値圏に入ったように見える。いったん利喰い売りを入れておいても下値で買い直すチャンスがありそうだ。

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